韓国のチョグク・スキャンダルをめぐる報道が連日怒涛のごとく日本のメディアで流れている。貿易管理の厳格化やGSOMIA破棄をめぐる日韓両政府の深刻な対立など、どこかに吹き飛んでしまったようだ。隣国のスキャンダルを面白可笑しく眺めるのは致し方ないとして、このスキャンダルを通して透けて見えるのは、韓国政府の対日批判は内政上格好の逃げ道になるという現実だ。いままで頭のどこかに、「どうしてそこまでこだわるの」といった疑問がつきまとっていた。だが、左右が激しく対立する韓国では、国内の政敵を叩くより日本を叩く方が楽なのだ。だから必要以上に日本を攻撃する。それしか不統一な国内を統合する原理がないのだろう。韓国の内政問題はかくして日本の問題にもなる。

それにしても今回のチョグク・スキャンダルはわかりやすい。司法長官に指名されたチョ・グク氏につきまとう疑惑は、大別すると①娘の不正入学②妻を中心とした一族のファンドに絡む疑惑③左翼の相互扶助機構の存在、といったところだろう。おそらくこの3つの疑惑はいままでは保守派に属する人々に共通するものだと見られていた。だからチョ・グク氏は野党時代、そこに果敢に攻め込んで人気を博したのである。ところが、左翼勢力を代表し清廉潔白に見えたチョ・グク氏が、文在寅(ムンジェイン)政権の中心的な人物に成り上がったあとで見えてきものが、保守政権がやっていたことと「瓜二つ」であるという現実だ。今回のスキャンダルは見事なまでにその構図を浮き上がらせている。

私募ファンドに絡むスキャンダルは、日本ならおそらく権力を悪用したインサイダー取引だろう。この一点でチョ氏は真っ黒だ。そこに一族が群がり、志を同じくする政治家が倫理感をかなぐり捨てて蝟集している。まさか左翼勢力がと思うほど、権力を吸引力とした利益共同体の結集力は強い。チョ・グク氏を取り巻く人脈(利益共同体)の間では、入学試験で便宜をはかるのも投資情報を共有するのも、あるいは奨学金を出すのも当たり前なのだ。もっといえば、朴槿恵政権が友人の崔順実 (チェ・スンシル)と組んでやっていた不正と全く同じことを、チョ・グク氏ならびに文政権はやっている。韓国では保守も革新も水面下で、個人や同志への利益誘導を密かに行なっている。だから、臭いものに蓋をしながら日本を攻撃する。韓国に対する日本の寛容な対応が日本バッシングを過激にした。未来志向の難しさがここにある。