11日に内閣改造と自民党の役員人事が行われる。事前の予想では安倍内閣の柱である麻生財務大臣、菅官房長官、二階幹事長の三人が留任する見通し。内閣改造自体は大幅になる見通しで、茂木経済再生担当相を外務大臣に起用する説が有力だ。具体的な人事は11日に発表されるまで待つしかないが、人事以上に重要なのは消費税増税後の経済・財政運営をどうするかだろう。増税前の駆け込み需要は発生しておらず、嵐の前の静けさのような奇妙な雰囲気が日本経済を覆っている。だが。10月以降日本経済は10%という消費税の圧迫を受けることになり、消費者マインドはかなり慎重になるだろう。なにせ消費税が10%ときりのいい数字になり、税額は100円で10円、1000円で100円、1万円で1000円とすぐ計算できる。

100円のものを買って10円の消費税がかかるというのはまだいい。だが、1万円のものを買うと消費税が1000円とられるというのは消費者にとってかなりの圧迫要因になる。1000円あれば100円ショップで9個の商品が買える。10万円のものを買って消費税で1万円とられるよりも、こちらの方が「負担感」が強いのである。ここが消費者心理の微妙なところで、わかりやすく現実感が伴うことにが消費の手控え要因になる。給料がそれなりに増えているなら多少の負担増は苦にならない。だが、ベースアップより社会保障関連費用の負担増の方が多いとなると、10%という消費税の負担感がより大きく感じられるようになる。駆け込み需要が起こらないのは吉兆ではなく、長期にわたって消費を手控えようという前兆と見るべきだろう。

厚労省が6日に発表した7月の毎月勤労統計(速報)によると、7月の実質賃金は前年同月比0.9%減、7カ月連続マイナスだった。実質賃金がマイナスの中で消費税の税率が2%上がる。安倍首相は「リーマンショック級の景気後退が起こらない限り消費税を上がる」といい続けてきた。表面的には日本経済にも世界経済にもリーマンショック級の後退は起こっていない。だが、実質賃金がマイナスの中で消費税率が上がる、それが消費者にとっては“リーマンショック”級なのである。内閣改造で麻生財務大臣は留任するようだ。消費増税の仕掛け人である財務省を所管している。財務省は庶民のリーマンショックが理解できない。麻生留任で内閣改造後の経済・財政運営はこれまでと何も変わらないだろう。庶民の“リーマンショック”がわからない財務大臣を退任させない限り、今回の内閣改造に期待する要素はない。