FRBが予防的緩和の終了を示唆したのに対して、昨日、金融政策決定会合後に記者会見した黒田日銀総裁は、現在の超低金利政策を来年春以降も長期にわたって続ける方針を明確にした。日本経済の現状は「物価安定の目標に向けたモメンタム(勢い)が損なわれるおそれが一段と高まる状況ではないものの、引き続き注意が必要な情勢にある」と説明している。わかりやすく言えば「危険ではないが、危険が回避できたわけでもない。引き続き要注意だ」と指摘している。振り返ってみればもう何年も同じ状況が続いている。個人的な印象では、日本の現状は悪いわけではないが、何となく重苦しい、そんな感じがする。

昨日の記者会見の概要を日経web版から拾ってみる。ポイントは①世界経済の減速を背景にわが国の輸出や鉱工業生産は弱くなっている②一方で景気の短期的な変動に左右されにくい根強い投資需要もうかがえる③具体的には物流センターの投資、省力化投資、技術革新に向けた投資など④外需が弱くても設備投資を中心とした内需はしっかりしている⑤国際通貨基金(IMF)は世界経済の回復が半年ほど後ずれしているとみている。日銀の見解もそれを踏まえている。こんなんところだろう。当面は現状の金融政策を維持するものの、必要となれば「マイナス金利の深掘りなど躊躇なく金融緩和を行う」と強調する。

FRBと違って予防的緩和は必要ないという見解だ。景気が予想以上に悪くなった場合にはマイナス金利の拡大以外にも、「政策金利の引き下げや資産買い入れプログラムの拡大、マネタリーベースの増加ペースの加速などの様々なオプションがある」としており、金融政策はどこまでも柔軟に対応できるといつも通りの見解。昨日の会見では相変わらず異次元緩和の出口についての発言はなし。要するに現状がだらだらと続くと指摘しているにすぎない。要するに日銀としては「手詰まり状態」なのだ。実体経済を凧に例えれば、糸(金融政策)はきれていないものの、凧は地面にだらしなく横たわっており、凧と日銀を結ぶ糸はだらりと地面に這いつくばっている。そんな中で昨日安倍首相は、景気対策の検討を指示した。防災を盾に財政が動き出そうとしている。