総務省が本日発表した昨年11月の家計調査によると、2人以上の世帯の消費支出は1世帯あたり27万8765円となり、物価変動の影響を除く実質で前年同月比2.0%減った。10月の消費増税から2カ月連続の減少だが、減少幅は前月(5.1%減)より縮まった。前回14年の消費増税後の2カ月目(8.0%減)と比べても落ち込み幅は小さく、持ち直しの兆しが出てきた。以上は日経新聞からの引用である。要するに消費増税後の家計支出は減っているが、減少幅は14年4月に税率を5%から8%に引き上げた時に比べると縮まっている。先行きは持ち直すだろう、心配はないとの楽観論である。

この認識が正しいかどうかは、時間が経てばはっきりするだろう。個人的には楽観できないと思っているが、キャッシュレス決済に伴うポイント還元といった対策もとられており、必要以上に悲観することはないかもしれない。ただし、10月に比べて落ち込み幅が縮小しているとか、前回に比べてと減少幅が小さくなっているという楽観論には根拠も説得力もない。前回は税率の上げ幅が3%だった。今回は2%である。わずか1%しか違わないが、財布の紐を引き締める度合いはその分小さくなっている。それに家計はすでに乾いたタオルを絞るようにして余計な支出を切り詰めている。そんな中で引き続き緊縮生活が続くだけである。落ち込み幅が小さくなるのは当たり前だろう。

問題は今後も家計の負担が間違いなく増えるという点にある。収入は経済の先行きが不透明なことから、企業の人件費抑制圧力は引き続き維持されるだろう。安倍内閣が予定している全世代型社会保障改革も、家計にとっては負担増の圧力がかかる。退職老齢年金制度の見直しなど、60歳から64歳までの比較的給料の高い世帯は収入増となるが、大半の低所得者は医療費等を含めれば負担増になる。要するに高所得者に暖かく、低所得者に冷たい政策が続くのである。逆進性の強い消費税率の引き上げによって、家計は低所得者ほど負担が増えている。そんな事実を無視して減少幅が減ったから、この先持ち直すと見るのは楽観的すぎる。