ブルームバーグが配信した記事によると、「ヘッジファンド運営会社ブリッジウォーター・アソシエーツのボブ・プリンス共同最高投資責任者(CIO)は、ブームバスト・サイクルという形の景気循環は終わったとの見方を示した」とのことだ。景気が上昇と下降を交互に繰り返す状態を通常はブームバスト・サイクルという。著名な投資家であるジョージ・ソロスはこれを、バブルとその崩壊に例えた。それ以来このサイクルはバブルとその崩壊を意味するようになった。米元財務長官のサマーズ氏は景気の長期停滞論を提起している。世の中の多様化に連れて景気の波も変化しているのだろうか。

ソロス氏は「世界的な規制機関がなければ、資本主義、自由市場主義の下では、間違った仮説が生まれ、強化され、バブル(ブーム)が起こり、最後にこれが誤りだと市場関係者が気づき、バブルが崩壊(バスト)する。こうしたサイクルが必然的に起きる」と、主張した。1990年代半ばのことである。プリンス氏はダボスで「世界の中央銀行による金融引き締めは『景気下降を引き起こすことを狙ってはいなかった。実際に起きたこととは違う目的があった』と指摘。『だが、われわれは教訓を得られたと思う。ブームバスト・サイクルの終わりを目にした可能性が高いことが示された』と述べた」。ウムムム・・・。

サマーズの長期停滞論は貯蓄と投資のバランスが崩れ、均衡金利が著しく低下して長期停滞論を引き起こすという仮説だ。要するに需給関係が崩れ供給過剰になっている。だから金利を引き下げ、需要を喚起する必要があるということだ。これにプリンス氏の主張を重ねてみると、FRBの利上げは景気を抑える規制措置ではなかった、ブームバーストを退治する措置だった。これが教訓だ、そう言っているように読める。いずれにしても世界が直面している現下の問題は景気の過熱ではなく需要不足だ。これにどう対応するか。ところで、本当に需要は不足しているのか。例えば異常気象に伴う自然災害。高齢化にともなう医療需要の急増。だが、誰もこれを需要とはみなさない。財源論が人の目を眩ませている。