ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が「日本の消費税の大失敗」と題した社説を掲載した。時事通信によると1997年と2014年の過去2回の増税時と同様に経済に打撃を与えたとして、「三度目の正直とはならなかったと皮肉った」とある。皮肉を言って済む話ではなく、個人的には「安倍首相の終わりの始まり」ではないかとみている。桜を見る会がこれに追い打ちをかけるが、時の政権は経済政策で失敗すると倒れる確率が高くなる。どうやら安倍政権も過去の失敗の轍を踏んでしまったようだ。前から指摘していたことだが、政権は消費増税の後遺症によってこれまで以上に厳しい局面を迎えた気がする。

WSJの社説は、日本の昨年10~12月期のGDPが、増税前の駆け込み消費の反動などで急減したのは「当然だ」と指摘。新型コロナウイルスの感染拡大にも触れ、「増税のタイミングとしては最悪」「回復力が最も必要な時に経済を締め付けてしまった」と非難している。その上で、安倍首相が12年の第2次政権発足時に掲げた、「経済活性化に向けた大規模な政策改革」を実行していないと主張。「日本が安倍氏の経済失政の代償を回避するのは手遅れだ」とこき下ろした。WSJは日本で言えば日経新聞に相当する。同紙は消費増税に寛容に見えるが、米国の有力紙は言いたいことをズケズケ言う。思わずトランプ大統領を連想してしまったが、個人的にはこの見解に同調する。

日本国内で消費増税を批判する声は主流派の中にはほとんどない。財政再建すれば日本の将来は明るくなる、こういった“思い込み”が大勢である。この説が非現実的なことは少し考えればすぐわかる。財政再建を急げば経済は底割れする。底割れした経済を子々孫々に残して彼らは喜ぶのだろうか。財政再建派の決まり文句は「将来世代の負担が軽くなる」だ。国債の償還負担は確かに軽くなるだろ。だが、底割れした経済の立て直しに新たな経済対策が必要になる。その時日本にはそれに必要なリソースは残っているのだろうか。後世史家が安倍政権を振り返れば、「経済政策で失政を繰り替えした長期政権」と評価するだろう。