新型コロナウイルスの感染が世界規模で拡大する中で、FRBによる利下げ説が浮上してきた。ロイターは「ニューヨーク外為市場では、米連邦準備理事会(FRB)が新型コロナウイルスの感染拡大に対応して年内に利下げに動くとの観測を背景に、ドル指数が軟化した」と伝えている。感染が拡大する中でドルはこれまで「安全資産」として買われる傾向にあり、他通貨に対してややドル高で推移していた。唯一の例外は円で、国際的なドル高の中でむしろ円に対してはややドル安気味だった。きっかけは米疾病対策センター(CDC)が25日、緊急計画の概要を示したことにある。

トランプ大統領は訪問中のインドで、新型ウイルスは「米国内では非常によく封じ込まれている」(ブルームバーグ。以下同じ)と発言。米国内の「感染者はほんの少数」であり、「クルーズ船を下船・帰国した人々のうち、感染した人も回復しつつある」と楽観的な見通しを述べていた。これに対してCDCは「米国内で市中感染が起きると予想している」とし、「起きるか起きないかという問題ではなく、いつ起きるかの問題だ。必ず起きる」と強調した。市場は大統領の見通しよりも専門家の見解に軍配をあげたわけで、これを材料にドルは売り込まれたのである。

マーケットではFRBが年内に利下げをするとの見方も広がった。FRBのグラリダ副議長は「米金融当局者は新型コロナウイルスの感染拡大を注視しているが、それが見通しの大幅な変更につながるか判断するのは依然として時期尚早だ」との見解を述べている。にもかかわらずマーケットは「利下げする」と先を読み始めている。ドル安も利下げもこの先どうなるのか、現時点ではまったくわからない。大事なことはCDCの情報提供をもとにそれぞれの関係者が、それぞれの見解を公にすることだ。日本ではタイムリーに肝心な情報が出てこない。結果的に憶測、推測、予測が乱れ飛ぶ、中には邪推もある。日米の違いはこんなところにもある。