けさニュースをみて、最初は何のことだかまったくわからなかった。パウエルFRB議長が、政策金利をゼロにしたとある。たしか連邦公開市場委員会(FOMC)は17日からのはずだったが、政策金利を引き下げた?はて、どういうこと?何これは?疑問が頭を駆け巡り、最初は何かの間違いではないかと思った。ところが、現実はパウエル議長がFOMC(公開市場委員会)を繰り上げ、政策金利の大幅な引き下げを決めたという。それも1%だ。ここまできてもまだ半信半疑だった。それだけではない、日米欧など主要な中央銀行が米ドルのスワップ協定を改定し、ドルの供給拡大で合意したという。さらに驚いたことには日銀は18日、19日に予定していた金融政策決定会合を本日、16日正午に繰り上げると発表した。

米国の利下げについては、一昨日トランプ大統領がFRB議長の解任権をチラつかせながら、大幅な政策金利の引き下げを要求していた。この時は、いつものこと、また大統領の悪い癖が出たかぐらいに思っていた。この時期に露骨に政策金利の引き下げを要求するのは明らかに逆効果だ。仮にパウエル議長が内心「やろう」と思っていても、大統領からあからさまに要求されれば、人情としてはどうしても「やりたくなくない」ということになる。そんなことをすれば大統領の言いなり、中央銀行の独立権の放棄など、様々な悪評が立ってしまう。パウエル議長は「逆に追加利下げはしないだろう」、そんなことを考えていた。それがなんと、大統領のあからさまな利下げ要求の翌日に、FOMCを繰り上げて大幅利下げを決めたのである。

パウエル議長の決断は英断が追従か。見方は分かれるだろう。だが、あえて言えば今回の議長の判断は、臨機応変に目の前にある緊急事態に対応した“英断”だったのではないか。同議長は3日に政策金利を突如0.5%引き下げた。だが、この時は市場はほとんど反応しなかった。というよりはNYダウは暴落したのである。米市場の反応は明日にならないとわからないが、米国、フランス、スペインなど世界中の国々で緊急事態宣言が相次いでいる。それだけに、一見なりふり構わぬパウエル議長の決断は、事態の深刻さの裏返しでもある。日銀も金融政策決定会合の繰り上げを決めた。打つ手が限られている黒田日銀がどう対応するか、これからの焦点だろう。