緊急事態の期限は5月6日。これから大型連休にかけて宣言をいつ解除するか、議論が活発化するだろう。新型コロナの感染拡大に多少改善傾向が見られるものの、安倍首相が求めている「最低7割、できれば8割、接触機会を削減する」との目標には遠く及ばない。6日の宣言解除はかなりハードルが高そうだ。とすれば7日以降も当面は緊急事態が続く。欧米では医療崩壊と経済崩壊を天秤にかけ始めている。コロナの拡大も怖いが経済の崩壊は長い目で見るともっと恐ろしい。二者択一の問題ではないが、これから少しずつ欧米はロックダウン(都市封鎖)解除に動き出すだろう。さて日本はどうする。

22日に開かれた専門家会議の「状況分析・提言」を改めて読んでみた。テレビを始めメディアは、「人との接触を減らす10のポイント」に比重を置いてわかりやすく解説している。テレビは連日この問題を取り上げているようだ。だが「状況分析・提言」に盛り込まれている内容はそれだけではない。医療体制、PCR検査の拡大、保健所対策、感染者の収容対策、搬送問題、マスクや防護服など物流対策、国や自治体の連携、都道府県知事のリーダシップなど、盛りだくさんで幅広い。新型コロナと戦うには日本中が総力をあげるしかないのだから、当然といえば当然だ。残念ながらテレビが伝えているのはその中のほんの一部にすぎない。これでは日本中で繰り広げられている全体像が見えないのだ。

「状況分析・提言」には、「空き病床の見える化を行う」といった表現がある。すでに多くの自治体が取り組んでいる。だが、国全体として政府や国、自治体が新型コロナとどやって戦うとしているのか、戦略・戦術の全体像が「見える化」されていないのだ。極端なことを言えば現下の戦いではっきり見えているのは、「最低でも7割、できれば8割」という接触機会の削減目標だけだ。だからテレビは接触が減らない地域を取り上げて攻撃する。これでもか、これでもかと濃厚接触と思しき場面を映し出して視聴者に反省を促す。小池知事は「買い物は3日に1回」と新たな自粛要請(実質的な強制)に乗り出す。それも必要だろう。だが、もっと必要なのは対策の全体像だ。メディアはこの戦争の全体像をもっと「見える化」すべきだ。