新型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の配備をめぐり、河野防衛大臣は技術的な問題を理由に計画の停止を表明しました。計画の継続は難しい見通しで、政府は、北朝鮮の弾道ミサイルへの対応などで足並みの乱れが生じないようアメリカ側に理解を求めていく一方、野党側はこれまでの政府の説明と食い違っているとして、ただしていく構えです。

イージス・アショアについて政府は、山口県と秋田県にある自衛隊の演習場への配備を計画していました。

河野防衛大臣は15日、迎撃ミサイルを発射する際に使う「ブースター」と呼ばれる推進補助装置を安全に落下させるためにはミサイルそのものの改修が必要と分かったとしたうえで、「その費用や期間を考えれば、配備は合理的でない」と述べて計画の停止を表明し、政府は今後の対応をNSC=国家安全保障会議で検討することになりました。

ただ防衛省の幹部は、現行のシステムを配備できる安全な場所を見つけるのは困難だとしていて、計画の継続は難しい見通しです。

こうした中、アメリカとは北朝鮮の弾道ミサイルへの対応などで連携が欠かせないことに加え、システムの購入契約が進んでいるため、政府は足並みの乱れが生じないよう、丁寧に説明して理解を求めることにしています。

政府は「ミサイル防衛能力の強化が必要なことに変わりはない」としていて、今後新たな防衛手段の導入も視野に検討を進め、必要に応じて中期防=中期防衛力整備計画も見直すことにしています。

一方、野党側は、今回の判断は、政府がこれまで北朝鮮の弾道ミサイル攻撃への対処能力を高めるため配備が必要だと説明していたことと食い違っているとして、16日開かれる衆議院安全保障委員会などで、ただしていく構えです。

米 アジア太平洋戦略への影響など検討か

アメリカ政府は公式な反応を示していませんが、イージス・アショアの日本への配備で日米の防衛協力が強化されると評価してきたことから、その影響などを検討しているとみられます。

イージス・アショアの日本への配備をめぐっては去年9月、当時、国防総省で安全保障政策を担当していたルード次官が「アジア太平洋地域における同盟国との連携において日本が2基のイージス・アショアを配備するのは最もよい例だ」と述べるなど、日米の防衛協力が強化されるとして高く評価していました。

また2018年には当時のハリス太平洋軍司令官が「日本の防衛を支援するアメリカ海軍の艦船の負担を減らし、その分の艦艇を南シナ海やインド洋など必要な場所に派遣できる」として、アメリカ軍の負担の軽減と役割の分担につながるという認識を示していました。

このためアメリカ政府として、配備計画の停止が日米の防衛協力とアメリカ軍のアジア太平洋戦略に与える影響などを検討しているとみられ、今後、国防総省やホワイトハウスがどのような反応を示すかが焦点となります。