コロナ対策として3密回避、新しい生活習慣が定着しはじめるなか、首都移転論あるいは首都機能移転論が浮上してきた。日本列島はもともと大都市周辺に人々や機能が過度に密集する構造になっている。これはコロナウイルスの温床でもある。そのわりに感染者や死亡者が少ないのは不思議だが、こちらは山中教授提唱の「ファクターX」解明に待つしかない。大事なのは過密構造の解消だ。3密回避が定着する中で誰がこの問題で声をあげるか注目していたが、声をあげたのは自民党だった。きのう首都機能分散を議論する議員連盟が結成された。

日経新聞によると、「自民党の有志議員は首都機能などの分散をめざす議員連盟を立ち上げた」とある。この記事のタイトルは「首都機能の分散、議論再燃 コロナやリモート普及背景、自民で議連発足」となっている。ちょっと気になるのは「首都機能の分散」がメインで、「首都移転」ではないこと。テレワークの浸透でサラリーマンの在宅勤務が増えている。本社は東京都にあるが、勤務地は千葉県や神奈川県、埼玉県の自宅という人も多いだろう。これらの人たちから見れば本社機能はすでに地方に分散していることになる。これに倣えば「首都移転」より「首都機能移転」の方が実現可能性は高いかもしれない。

日経新聞によると昨日設立された議連の正式名称は「社会機能の全国分散を実現する議連」。首都移転は目指していないようだ。「社会機能」を全国に分散させることを目的としている。5月1日現在で推計人口が1400万人に達した首都・東京。この人口をどうやって減らすか、これは緊急の課題である。ポスト・コロナの経済的な主役は内需拡大。首都機能の分散を内需の柱にすればいい。デジタル社会の構築、地方創生、格差縮小、1億総中流の“羊羹型”に及ばないまでも、“どら焼き型”の日本列島が再構築されればそれでいい。ウイルスと災害に強く、格差が小さい平和国家、これが実現できれば財政赤字が拡大しても将来的には問題はない。