先週はある意味で歴史的な週だったのかもしれない。そんな気がする。24日にヒューストンにある中国の在米総領事館が閉鎖された。27日には四川省成都にある米国の総領事館が閉鎖される。米国が先に仕掛け、中国が報復する形になっている。ポンペオ国務長官は21日に英国を訪問。ラーブ英外相との会談後に共同記者会見を行い、中国がもたらす「脅威」を理解する「同盟」を構築したいとの考えを示した。英国を手始めに対中包囲網づくりが本格的に始まったとみていいだろう。豪州は26日、国連事務総長宛に書簡を送り、「中国が主張する南シナ海の領有権について、国際法に違反していると否定する見解を示した」(時事通信)。中国包囲網はにわかに現実味を帯びてきた。

貿易摩擦に人権問題、これに香港問題が加わって米中関係は緊張の度を日増しに強めている。知的財産権をめぐる米政権の対中攻撃は衰えることなく持続し継続している。そうした中でついに在米総領事館の閉鎖命令が唐突に発表された。閉鎖理由は同領事館が米国の知的財産を違法に盗み取る中心的役割を担っていたという点を挙げている。時事電は米政府高官が「スパイ活動への関与は『許容限度を超えていた』と非難した」と伝えている。中国が盗み取ろうとしていたのは新型コロナのワクチンに関する情報だとも言われている。これが事実だとすれば、領事館の閉鎖も致し方ないと言う気がしてくる。ただし、中国による知的財産権の侵害に関するニュースは最近、かなりの頻度で流れている。ためにする情報操作は常に念頭に置くべきだろう。

ポンペオ長官の講演がカリフォルニア州のニクソン大統領図書館で行われたという点も興味深い。ニクソン政権と言えばキッシンジャー補佐官が隠密に国交断絶中の中国を訪問、米中首脳会談に道を開いたことを思い出す。これを機にニクソン政権は中国に対する「関与政策」に乗り出す。経済的に取り残された中国を手助けすれば、いずれは価値観を共有する民主主義の国に転換し西側陣営に参加してくるだろう。観測は甘かった。習近平政権になって一帯一路を掲げ、西沙、南沙、尖閣諸島と領土的野心を隠そうともせず、香港ではとうとう一国二制度を葬り去った。インドとの領土紛争も再燃している。究極の目的は台湾か。ここまできてポンペオ長官は「関与政策に終止符を」と講演で訴えた。米中関係は一気に風雲急を告げてきた。