最近読んで面白かった記事を紹介する。2日付の日経web版に掲載された「コロナ後の『よりよい復興』、グリーンが主導」という記事だ。これは同紙の「Global Economics Trends」というコーナーに掲載されたもので、世界的に関心を集める経済学の最前線の動きやトピックスを紹介している。その一例としてあげたのが「Build Back Better(BBB)」。この記事を書いた記者は「コロナ下において『よりよい復興』と訳される英語フレーズを耳にする機会が増えた」と指摘する。「復興にあたって、単に昔の状態に戻すだけではなく、難しい社会問題の解決を図りながら経済を立て直そうという考え方」、それがBBBだ。こうした考え方が主流になりつつあるという。日本語に訳せばまさに「よりよい復興」だろう。

同じようなフレーズとして「グリーンニューディール」「グリーンリカバリー」がある。前者は米民主党左派が打ち出したもの。後者は欧州連合(EU)が最近盛んに主張していることだ。トランプ政権の「America First」をベースにしたパリ協定脱退とは正反対の考え方と言っていいだろう。グリーンリカバリーの象徴とも言うべきものが、難産のすえに創設された復興基金だ。総額7500億ユーロ(日本円換算92兆円)のこの基金は、日米などが矢継ぎ早に打ち出した補正予算に相当する。米国の300兆円、日本の100兆円といった規模には及ばないが、この中には日米にはない環境・気候変動対策がしっかりと盛り込まれているのだ。ポストコロナは環境問題を解決しながら、「グリーン主導」に軸足を置いている。

ECBのラガルト総裁は、コロナ対策として発行されるグリーンボンド(環境債)を資産買い入れの対象にすると公言している。バイデン候補は気候変動対策として4年間で2兆ドル(約210兆円)を拠出すると公約に掲げた。こうした動きは民間にも広がっている。世界的企業であるユニリーバのアラン・ジョーブCEOは「われわれはコロナの災厄をきっかけに、ビジネスの意思決定の中心に自然を据えるべきだ」と主張している。金融市場も最先端はESG投資(環境・Environment、社会・Social、企業統治・Governance)だ。環境や社会に配慮しない企業には資金が集まらない時代がいずれくるだろう。日本も目先の対策と同時に、ポストコロナに向け世界的なトレンドに目配りしておくべきだろう。