ベラルーシはどこにあるのか、この国に関する知識はほとんどない。調べてみるとウクライナの北、リトアニアの南に位置する旧ソ連領だ。先ごろ行われた大統領選挙で不正があったとして、E U首脳が昨日電話会談を行った。その結果、多くの首脳が大統領選のやり直しを支持したとロイターが伝えている。だが「首脳の多くがベラルーシ大統領選のやり直しを支持したものの、大統領選で争った両陣営に『対話』を促し平和な権力移譲を求めるにとどまった。反政権派弾圧や不正投票の責任を負うとしてこれまでに発表された個人に対する制裁を可及的速やかに導入することも発表した」。煮え切らない内容の記事だ。おそらく首脳の認識に温度差があり、E U(加盟27カ国)としてはっきりした方針を打ち出せなかったということだろう。

会議後にドイツのメルケル首相は記者団に、「選挙は自由でも公正でもなかった。従って、EUとしてこの選挙結果を認めることはできない」(ロイター)と言明。「(ベラルーシの)ルカシェンコ大統領は電話への応答を全て拒否しており、遺憾だ」と語っている。時事通信によるとE Uは会議後の声明で、ルカシェンコ大統領が8割の得票で6選を決めたとされる選挙は「自由でも公正でもなかった」と指摘。さらに、「EU内には、ロシアのプーチン大統領が軍事援助による介入の可能性を示唆したことで警戒感が高まっている」と解説する。混乱する国内の背後にロシアの影が見え隠れしている。ミシェルEU大統領は記者会見で、「ベラルーシの将来を決めるのはベラルーシの国民でなければならず、ブリュッセルでもモスクワでもない」と強調、個人的には「その通り」と合点した次第。

それにしても、いまだにこんな国があることが驚きだ。選挙で8割の得票を得ること自体が西側では考えられない。対立候補だったスベトラーナ・チハノフスカヤ候補が、隣国リトアニアに亡命せざるを得ないような弾圧を受けていることも異常だ。法律に基づいて自由で開かれた価値観を共有している自由陣営から見ると常軌を逸している。プーチン大統領にも不正選挙の疑惑が付きまとう。ハバロスクでは前知事逮捕をきっかけに反プーチンデモが起こっている。反対派を弾圧するプーチン大統領、そのプーチン氏が軍事介入を示唆しながら支援しているルカシェンコ大統領。ベラルーシに関する知識はほとんどないが、状況から見る限りE Uの主張が圧倒的に正しいように見える。プーチンのロシア、習近平の中国、金正恩の北朝鮮、いずれも市民を強権で弾圧する国だが、どうやらベラルーシもこれに連なる国のようだ。