コロナ禍で恩恵を受けている一つがゲーム業界だが、「あつまれ どうぶつの森」が大ヒットした任天堂は、生産が追いつかないほど超繁忙だという。ブルームバーグによると「8月初めには目標生産台数を約2500万台に引き上げていたものの供給不足は解消されておらず、組み立て業者の工場稼働率は現在120%に達している」という。コロナによる“巣ごもり需要”が巻き起こした人気爆発だが、需要はゲーム関係者だけではない。米大統領選挙でバイデン氏が「あつ森」を選挙運動に活用し始めたほか、自民党総裁選では石破陣営が選挙ツールとして使うとした。こちらは選挙規定に違反するとかで実現していないが、狙いは巣ごもり中の有権者に直接訴えること。選挙でも利用価値があるゲームのようだ。「禍転じて福となす」、コロナがもたらした意外な副産物だろう。
個人的に「あつ森」を使ったことはないが、最近は頻繁にメディアに登場するので気になっている。最初に「あつ森」の存在を知ったのはロイターの記事(5月11日配信)だった。「アングル:人気の『あつ森』遊べぬ中国、あの手この手で抜け道探し」という内容。「あつ森」は、「プレーヤーが仮想世界に自分の分身や自宅を作り上げ、他のプレーヤーと交流して現実逃避できる遊び」、ネット上に作った自分の分身がインターネットを通して世界中のプレーヤーと交流できる。巣ごもりしながら交流する、こんなところにこのゲームが人気を集める秘訣があるのだろう。これに神経を尖らせているのが中国、というのがロイターの記事のポイントだ。同記事によると「香港の民主化運動活動家、黄之鋒(ジョシュア・ウォン)氏が『あつ森』を使って本土政府を批判して以来、中国政府は違法販売の取り締まりに乗り出した」というのだ。
これを見て中国も大変だと思った。こんなところまで目を光らせていないと安心できないのだろう。「習近平さんお疲れ様、さぞ疲れることでしょう」、そんなことを思っていた。そしたら今度は日経新聞が「バイデン陣営は9月1日、任天堂の人気ゲーム『あつまれ どうぶつの森(あつ森)』を選挙活動に使うと発表した」と伝えた。バイデン氏似の分身をつくり、陣営のロゴを看板やTシャツのデザインに刷り込む。これで「あつ森」のプレーヤーに売り込むという作戦だ。「あつ森」を使うのは子供だけではない。大の大人が真剣に利用方法を考えている。これに便乗しようとした石破陣営は、ネット以前の古い「選挙規則」に阻まれて利用できなかった。一つのゲームをめぐっていろいろな人が知恵を絞っている。誰もが勝機や商機を求めている。正気とは思えない国も蠢いている。たかがゲーム、されどゲームか。ウイズ・コロナ、ポスト・コロナ、単に引きこもっているだけでは、チャンスは掴めないということだ。