日本、米国、オーストラリア、インド4カ国の外相が6日、都内で会談した。「自由で開かれたインド太平洋」構想の実現に向けて協議。時事通信によると、自由貿易や法の支配など「価値観を共有する諸国との幅広い連携を目指す方針で一致。4カ国による外相会合を定例化し、年1回のペースで継続することでも合意した」という。記事は4カ国外相会談の結果を淡々と伝えている。コロナ禍のもとで対面形式の国際交渉が始まり、菅首相は来日したポンペオ国務長官と会談、外交デビューを果たした。ごくありふれた記事と思いきや産経新聞が「中国、日米豪印連携に警戒強める 圧力回避へ日本重視」、「ポンペオ氏訪問延期に韓国焦り 米中どっちつかずで『孤立』懸念」とこの会議を遠巻きに眺めながら、心穏やかならぬ中国と韓国の内情を伝えている。日米豪印の会議はどうやら水面下で静かに波紋を広げているようだ。

4カ国会談の中身は冒頭に記した通りだが中国は、日米豪印の4カ国が今回の外相会合を通じて連携を強めることに警戒感を強めている。新型コロナウイルスの感染拡大後に日本を除く3カ国との関係がそれぞれ悪化。そんな中でトランプ政権が呼び掛ける「中国包囲網」が形成されるのではないか。中国は、米国への反発を強める半面、日本には接近姿勢をみせている。中国側から見れば日米分断ということになるだろうが、米国から見れば中国の本音は包囲網形成を「恐れている」とみるだろう。だからポンペオ氏は南シナ海、東シナ海、台湾海峡などで中国が行っておる強権政治をあえて取り上げる。そして「中国共産党の腐敗、搾取、威圧から人々を守らなければいけない」と強調する。「自由で開かれたインド太平洋」を取り巻く状況はすでに“波高し”である。

韓国もまた微妙な視線でこの会議を見守っている。トランプ大統領のコロナ感染入院で、ポンペオ氏は訪韓の予定を取りやめて日本だけを訪れた。経済的には中国に近く、安全保障面では米国を頼ろうとする二俣路線。どっちつかずの韓国は、米国務長官の訪韓取り止めで「孤立懸念」を強めているというわけだ。当のポンペオ氏は日経新聞のインタビューに答えて、「インド太平洋に多国間の安全保障の枠組みを構築することが望ましい」と述べている。中国か米国か、韓国はこれから選択の余地なき選択を迫られるようになるかもしれない。それに引き換え日本はと言いたいところだが、日本とて事情は韓国とたいして変わらない。安全保障面では米国頼りで、経済的には中国との関係も維持したい。インドも豪州もここにきて中国との関係が厳しくなっている。そんな中で日本だけが、「一人我が道」というわけにもいかないだろう。安倍外交の継承を掲げる菅政権だが、“真価”が問われるのはこれからだ。