今朝、ロイターのニュースを見ながらベトナムが共産党一党支配の国だったことを改めて思い出した。ベトナムといえば市場経済をベースに成長著しい新興国のリーダー的存在だが、政治的には共産党が一党独裁体制を敷いている。規模は小さいが中国と瓜二つと言っていいかもしれない。そのベトナムでFacebook(FB)が検閲の強化にさらされているというのだ。メディアの報道(コンテンツ)をめぐってここでも権力との軋轢が起こっている。米国ではトランプ大統領と“フェイク・メディア”が対立している。それとは趣を異にするが、ベトナムでも権力とメディアが衝突している。メディアにとって権力との軋轢は勲章のようなもの。プラスにはなってもマイナスにはならないだろう、単純にそう思っていたがどうやら事情は違うようだ。

問題の記事はロイターが本日未明に配信した「ベトナム、フェイスブック閉鎖も 検閲強化なければ=関係筋」というもの。同記事によると「ベトナム政府は、交流サイト最大手の米フェイスブックが国内各地の政治的コンテンツの検閲を強化しない場合、サービスを閉鎖すると警告した」という。反政権的な投稿に神経を尖らせているベトナム政府は、これまでたびたびFBに検閲の強化を要請していたようだ。これを受けてFBは今年の4月、「現地ユーザー向けの『反国家』的な投稿の検閲を大幅に強化したが、ベトナムは8月に再び同社に批判的な投稿の規制を強化するよう要請した」とある。この記事のポイントは、FBが要請を受け入れなければ「閉鎖も辞さない」とベトナム政府が脅しをかけているという点にあるのだろう。FBのベトナクでの売り上げは10億ドルに迫るという。

これに対してFBの報道官はここ数カ月間でコンテンツの閲覧を強化する政府からの圧力が高まっているものの、「人々が自己表現を続けることができるように、サービス継続に向けてできる限りのことをする」と表明している。検閲を強化するのかしないのか、結論はよくわからないが、権力と利用者の間で板挟みになっているのだろう。FBはベトナムで「電子商取引と反政府意見の表現の場を提供」しており、利用者は6000万人に達している。FBは政府の圧力とは別に、国際人権団体アムネスティから「フェイスブックは人権を尊重する明確な責任を負っており、ベトナムも例外でない。同社はベトナムでの利益を優先しており、人権を尊重できていない」と指摘されている。検閲か利益か人権か、F Bを襲うトリレンマFB。閉鎖覚悟で人権を取らない限り、メディアとしての信用は失墜するだろう。