中国のアリババグループ創業者、馬雲(ジャック・マー)氏が描いた中国の金融を巡る未来像は本土の監督当局によって一変し、同氏に追随していた複合企業の野心も修正を迫られている。
350億ドル(約3兆6500億円)規模の新規株式公開(IPO)中止に追い込まれてから数週間が経過したフィンテック企業のアント・グループは、マイクロ融資部門への資本注入で規制当局と協議している。
JDドットコム(京東)傘下の京東数字科技による科創板(STAR)上場計画も宙に浮き、中国平安保険集団のフィンテック部門で米上場を先月果たしたばかりの陸金所も、IPOでの評価額が前回の資金調達ラウンドを下回り、一部株主と条件について再交渉せざるを得なかった。
各社を巡るこうした状況は非公開情報だとして匿名を条件に事情に詳しい関係者が明らかにした。
中国のテクノロジー大手が従来の金融サービスを変えるため、それぞれの影響力と規制上の緩い監督を生かしていることを最近まで体現していたのがフィンテック大手だったが、取り巻く環境が急速に変化していることをこうした状況は端的に示している。
規制当局が融資や銀行業のパートナーシップ、データプライバシーなどさまざまな分野に狙いを定める中で、各社は資本強化を急いだり、事業の見直しを検討したり、さらなる波乱に備え身構えたりしている。
中国政治・経済を専門とする調査会社プレナムのワシントン在勤アナリスト、ショーン・ディン氏は「中国では金融の安定は政治問題だ」と指摘。当局が「このような強いメッセージを送る目的は、将来のフィンテック企業がより用心深くなり、自社の商品が金融リスクをもたらし得るということを理解するように導くことだ」と解説した。
アントはコメントを控えた。京東数字科技は監督当局と協力しているとテキストメッセージで説明するにとどめ、これ以上のコメントはしなかった。陸金所は電子メール経由でコメントを控えた。
原題:China’s Fintech Giants Scramble to Rethink IPOs, Raise Capital(抜粋)