新しい年が明けた。今年はどんな年になるのか。「激動の時代」と予測するのが一番安易で簡単だ。誰もが予感しているし、そう言われて反論する人はいないだろう。激動と言った時、何が激動するのか、そこが肝心な点だ。米中はより激しく対立するだろうし、E Uを離脱した英国の経済は本当に大丈夫か、習近平はこのまま権力を維持できるのか。韓国は激動が状態化している。お隣の北朝鮮も金正恩の動静がいまだにはっきりしない。ポスト・メルケルをめぐるドイツの権力闘争、フランスもマクロン体制が盤石ではない。こうした不安定な状況の中で貿易摩擦は世界中に広がり、バイデン政権の誕生でグリーンディールをめぐり各国の思惑が交錯する。国内に目を転じると菅政権の迷走が気になる。総選挙まで1年を切ったがコロナ不況の出口はまったく見えなくなってきた。本当にオリ・パラは開催できるのだろうか。

激動の象徴は米国か。決選投票に持ち込まれたジョージア州の上院議員選挙(欠員補充を含め2名)が明日(5日)実施される。翌日には12月14日に実施された大統領選挙の投票人投票の開票が、上下両院の合同会議の形式で行われる。憲法に規定された公式の手続きだが、普通なら形式的なセレモニー過ぎない。それが注目されていること自体が異例中の異例だ。州議会の公式発表で敗北が決定的になっているトランプ大統領が、「盗まれた選挙」と不正投票の存在を主張している。当初反応が薄かった米議会共和党も、ここにきて大統領の主張に賛同する議員が増えている。共和党上院議員11人が合同会議で投票結果に反対すると表明した。下院議員も140人以上が反対すると表明している。それでも過半数に達する数ではないが、大事なことは上下両院で1人以上の反対者があれば正式に審議が行われるということだ。これまでまったく展望の見えなかったトランプ氏にとって、ささやかながら期待の持てる情勢になりつつあるようだ。

1月6日が激動の発火点になる可能性はある。だが、個人的にはそれをもって激動と言っているわけではない。米国の大統領選挙をはじめ日々起こっている世界中の出来事、要するに激動を伝えるメディアの視点が現実から乖離している気がして仕方がないのだ。この年末年始、新聞、テレビといった主要メディアはほとんど見なかった。スマホのニュースやTouTubeを時々覗く程度だったが、こちらは主要メディアがほとんど扱わないニュースが大半だった。ロイターやブルームバーグなど西側を代表する通信社はこれまで、「(トランプ大統領は)根拠も証拠も示さないまま不正投票があったと主張している」と強調してきた。その姿勢はまるで北朝鮮の朝鮮中央通信社や、中国の新華社の報道と瓜二つに思えるのだ。テレビも新聞も同じだ。日本のメディアは欧米の主要メディアに“付随”しているに過ぎない。そんなメディアが今年「激動」に晒されるのではないか、なんとなくそんな気がするのである。