緊急事態宣言が発令されて2週間が経った。懸念された陽性者の数はピークアウトの気配が見られるが、発令解除の目安となっている500人にはほど遠い。昨日の感染者は東京都で1471人。前日に比べて197人増えている。陽性者の短期的な変動に一喜一憂すべきではないが、宣言発動2週間目という節目であり日本中が注目していた数字だ。期待を裏切るかのように増加したことで、政府対応の手ぬるさに対する批判が改めて勢いを増すかもしれない。そんな中で定額給付金の再交付を求める声が強まっているようだ。時事通信によると、インターネット署名サイト「Change.org」は13日に再給付を求める署名活動を始めたが、20日までに7万2000人以上が賛同したという。再交付の理由として「自粛と補償はセット」「国民の命と生活を守るのは政府の仕事」などをあげている。
個人的には再交付すべきだと思っている。理由は自粛の代償ではない。日本経済再生の方策として、再交付はあってもいいと思っている。だが、実現することは100%ないだろう。麻生財務大臣をはじめ菅政権を支える主流派の大部分がこれに否定的だからだ。それでも菅首相が鶴の一声で再交付すると言えば、情勢は簡単に変化すると思う。だが、それも無理だろう。所信表明で同首相は日本経済再生のエンジンとして脱炭素化とデジタルを上げている。再交付は生活支援であり、消費喚起策に分類される政策だ。経済再生のエンジンとしてはカウントされていない。おそらくこれば菅首相の考え方というより日本政治を動かしている“主流派”の発想なのだろう。前回の定額給付のあと麻生財務相は再々「良い菌が増えただけ」と近視眼的なことを言っている。こうした認識が主流派の常識である。
再交付すべき理由は何か。アベノミクスに限らず日本の経済運営はここ何十年にわたって財政健全化路線をひた走ってきた。消費税を引き上げ、社会保障改革と称して健康保険料や医療費を少しずつ引き上げてきた。こうした中で法人税は減税を繰り替えしている。一方、家計の収入はどうだったのか。春闘は政府主導で多少上がったものの、ベアは定昇に毛が生えた程度。半面、物価はデフレにブレーキをかけた結果マイナス圏を脱出、わずかながらもプラス転換をしている。超低金利で預金も増えない。結局、定額給付の対象である家計の可処分所得はマイナスになっているのである。そんな中でコロナ禍は起った。低所得者や社会的弱者が大きな痛手を被っている。この人たちは消費を支える主役でもある。主役に元気がなければ日本経済は再生しない。本来なら消費税を引き下げるべきだが、主流派は絶対それを許さない。だとすれば次善の策で再交付すべきだが相手は頑迷固陋。国民が悲鳴を上げているのにアリの一穴が穿てない。
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