世界の主要国で人権を無視する動きが広がっている。ロシアでは先週末、帰国後拘束されていた反プーチン指導者・ナワリヌイ氏の釈放を求めるデモが、全国各地で大々的に展開された。モスクワでは民間の調査機関の調べで約4万人が参加、全国で4000人近い逮捕者がでたという。毒殺の危機を免れたナワリヌイ氏は被害者である。その被害者を拘束し、釈放を求めるデモ参加者を逮捕する。これはプーチン大統領による非人道的な人権侵害以外のなにものでもない。社会主義という価値観を共有する中国もこれに輪をかけた人権無視が行われている。50年は堅持すると約束していた一国二制度をあっという間に反故にし、強権によって民主派勢力を大量に逮捕している。習近平総書記にすべての権力が集中する独裁国家とはいえ、これはあまりにもひどい。

習政権の人権無視はこれにとどまらない。新疆ウルグアイ自治区では強制的な思想改造が実施されているといわれている。前国務長官のポンペオ氏は同自治区で行われているのは「ジェノサイド(集団虐殺)だ」と断言した。バイデン大統領の就任式を翌日に控えた19日のことである。中国に対する監視の目を緩めるな、バイデン政権に対する申し送りなのだろう。バイデン大統領と習総書記は昵懇の仲と見られている。「ジェノサイド政権を民主党は許すのか」。次期政権だけではない、ポンペオ氏の世界に対するメッセージだったのかもしれない。国連が1948年に制定した「ジェノサイド条約」によると「国民的、人種的、民族的、宗教的な集団の全部または一部を破壊する意図をもって行われる行為」のことをジェノサイドと定義している。次期国務長官に指名されたブリンケン氏もポンペオ氏の発言に完全に同意したと伝えられている。人権擁護は民主党の党是でもある。

トランプ政権は昨年6月、ウイグル人権法を制定し弾圧に加担した人や組織に対する制裁を可能にした。同じ趣旨の法律はベルギーや英国などでも制定され、EUは中国に対する監視を強めている。そんな中で日本でもネットで「日本でのウイグル人権法の成立を求める請願運動」が展開されている。同運動の請願趣旨によると「ウイグルへの弾圧は数年前から熾烈を極め、民族浄化に達する勢いです。その規模はナチスによるホロコーストを凌ぐと言っても過言ではありません」と訴えている。このコーナーで度々習近平批判をしてきた筆者も趣旨に賛同、請願に署名して主催者である今橋留美氏に送付した。今朝のニュースによると、中国はインドや台湾とも紛争を拡大しようとしている。軍事力を背景とした中国の拡大路線に目を瞑るべきではない。請願運動に関心のある方はこちらを参照。