【ニューデリー時事】中国と接し、1962年の中印国境紛争の舞台になったインド北東部アルナチャルプラデシュ州で、中国による集落建設が明らかになった。州は両国の係争地に当たり、今回の集落建設には、中国が実効支配地を作り、領有権の主張を正当化する狙いがあると受け止められている。

中国、マイクロ波兵器使用か インド軍否定

 インドの民放NDTVは18日、昨年11月の衛星写真を基に「インド政府が事実上の国境と見なす地点から約4.5キロインド側に、中国の住宅約100戸が建設された。2019年8月の写真では何もなかった場所だ」と報じた。インド外務省は報道を受け、「安全保障に関する全ての進展を絶え間なく注視し、主権と領土の一体性を守るため必要な手段を取る」と声明を出した。

 インドと中国は17年、ブータンを含む3カ国の国境問題をめぐり軍を約2カ月間対峙(たいじ)させた。その後、インドのモディ首相と中国の習近平国家主席は関係融和を志向。19年10月には習氏が訪印し、関係を深化させることで一致した。

 しかし、昨年6月にはインド北部ラダック地方の実効支配線付近で両軍が衝突。45年ぶりに双方に死傷者が出て、「1962年の国境紛争以降、最も深刻な事態」(ジャイシャンカル外相)に陥った。中国はこうした状況を背景に、インドへの圧力強化に動いたとみられている。

 中国外務省の華春瑩報道局長は21日の記者会見で「中国の域内に違法に建設された『アルナチャルプラデシュ州』なるものを容認したことはこれまで一度もない」と強調。集落建設について「自国内での通常の建設活動で、主権の問題だ」と主張した。