最初にこのニュースを見た時、わが目を疑った。そしてまさかと思った。記事を読み終えて「駄目だこりゃ」。バイデン大統領は中国と対等にわたりあえない、習近平総書記は執務室で満面の笑みを浮かべているだろう。26日、ホワイトハウスのサキ報道官が記者から中国政策を問われた答えがこれ、「戦略的忍耐」だ。日経新聞によるとサキ氏は中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席が世界経済フォーラムで行った講演を受け、対中政策は変わるかと問われた。これに対して以下のように答えている。まず「それはない」と明言、「中国はこの数年、国内でますます強権的になり、対外的な主張を強めている。中国は米国の安全保障、繁栄、価値観に挑戦しており、新しいアプローチが必要だ」と付け加えた。ここまでは普通の対応だ。問題はこのあと。
トランプ前政権の「米国第一」路線を転換し、同盟国との協調を通じて対処する方針を示したうえで、「いくらかの戦略的忍耐を持ちながら臨みたい」と述べたのである。サキ氏はオバマ政権で国務省の報道官を務めていた。「戦略的忍耐」は同政権の対北朝鮮政策の柱となった考え方である。誤解を恐れずに言ってしまえば、「何もしない」という政策だ。2期、8年、北朝鮮に対する「戦略的忍耐」を貫いた結果どうなったか。金正恩総書記は悠然と核開発を進め、いまや押しも押されもしない核保有国に躍り出たのである。北朝鮮だけではない。南沙諸島をはじめ南シナ海で中国の一方的な進出を容認し、同海域での緊張をかつてなく高めたのである。戦略的忍耐、それはオバマ政権の外交的な“失政”を象徴する言葉である。いまや左右を問わず多くの人の共通認識になっている。サキ氏がそのことを知らないはずがない。あえてか、とっさに出た言葉かわからないが、「戦略的忍耐」という言葉が飛び出すということは、政権内部で頻繁にこの言葉が使われている証拠かもしれない。
日経新聞の滝田編集委員は次のようにコメントしている。「ああ、やはりそれなんだな、と肩の力が抜ける感じがします。オバマ政権時代の北朝鮮政策、要するにほったらかし、が対中政策の基本になるとは。魚心あれば水心。中国共産党系の環境時報の編集長はすでに頰が緩んだようなツイートを重ねています。バイデン政権の対中外交については、相当警戒して見る必要がありましょう」と。嫌な予感がする。オバマ政権の戦略的忍耐がトランプ大統領を誕生させ、ポストトランプで再びオバマ亜流政権が誕生した。これは何を意味するのだろう。とりあえず朝日新聞から写真を拝借する。
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