鮮明というわけではないが、今朝、ブルームバーグ(BB)の記事を見ながらリーマンショックの記憶がおぼろげながら甦ってきた。タイトルは「CLO市場に有力な『鯨』続々と復帰、農林中金も再び購入検討開始」だ。CLOはCollateralized Loan Obligationの略、日本語ではローン担保証券と訳されている。金融機関が貸し付けた融資(ローン)を証券化し、売買しやすいようにしたもの。これによって金融機関は長期間固定していた貸出債権の流動化が可能になり、機関投資家など運用機関は超低金利時代に比較的利回りの高い有価証券に投資することが可能になる。この証券を格付けすることによってリスクの見える化が図られるなど、一見するとメリットが多い投資対象に見える。だが、この手法を低所得者向けのサブプライムローンに適用して大失敗したのがリーマンショックである。

BBによるとCLO市場の規模は現在約9000億ドル(約98兆3000億円)。昨年まで様子見していた企業が復帰しつつあり、市場はここにきて熱気を帯びつつあると指摘する。「複数の関係者が語ったところによると、CLO市場で最大規模の買い手だった農林中央金庫が再び購入を検討し始めた。昨年ほとんど姿を見せなかった米ウェルズ・ファーゴも戻ってきた。米フィデリティ・インベストメンツはすでに高利回りを求めてCLOの保有を増やした。バンク・オブ・アメリカは、以前は時々CLOを購入する程度だったが現在は数十億ドル規模を購入し、さらに買い増す計画だ」とある。行間から市場復活の熱気が伝わってくる。BBはこうした動きについて、「レバレッジドローン(Leveraged loan)への資金流入増加とも解釈できる」としている。同ローンは、主に投資適格未満(BB格相当以下)の相対的に信用力が低い企業に対して行われる融資(ローン)のことを指している。まさにサブプライムローンなのだ。

コロナ危機を背景に世界中の国々が積極的に財政出動を行なっている。世の中には膨大な過剰流動性があふれている。この資金は株式市場や債権市場に向かう。株は高騰し債券利回りは低下する。これだけなら過剰流動性はおとなしく既存市場に止まっているだろう。だが、米国では景気回復期待が一気に高まってきた。それを背景に国債の利回りが急上昇(価格は急落)、機関投資家は債券市場を敬遠しはじめている。行き場を失った資金が新たな運用先を求めて彷徨っている。そこにそろりと登場したのがCLOというわけだ。リーマンショックは2008年から9年にかけて起った。あれから10年超経過したとはいえ、まだ多くの人の記憶に残っている。CLO市場が再び破綻するとは思わないが、こういう記事を見ているとつくづく「歴史は繰り返される」と思う。