コロナウイルス「N501Y」が猛威をふるっている。政府をはじめ自治体、医療機関、専門家、メディア、評論家が総力をあげて感染防止に努めている。にもかかわらず感染は一向に収束する気配がない。今回の特徴は東京、大阪といった大都市に限らず、地方で感染が急激に拡大していることだ。先行した大阪にピークアウトの兆しが見られる半面、地方中核都市は逆にここにきて感染拡大のペースがはやまっている。その筆頭は北海道。朝日新聞デジタルによると「13日時点で直近1週間の人口10万人あたりの新規感染者数は、道内全体では60・85人で、道独自の警戒ステージで最も深刻な『5』の目安となる『25人』を大きく上回る。札幌市は同110・2人と目安の4倍以上にもなっている。『25人』は国に緊急事態宣言の発出を要請する目安でもあり、深刻な状況だ」としている。

広い北海道の中でもとりわけ札幌市の感染拡大は深刻だ。これを受けて鈴木知事は札幌市を対象とした緊急事態宣言の発令を国に要請した。地域を限定して緊急事態宣言を発令する、こうした対策があってもいいと思う。ウイルスは密集している。そこをガーゲットに強めの感染防止対策を施せば効果的だ。札幌の感染者数は全道の2倍近くに達している。まず札幌市を囲い込んでウイルスを封じ込める。そうすれば必然的にウイルスの勢いは衰える。効果的面だ。素人目にはそう思う。だが、政府の判断は違うようだ。加藤官房長官は鈴木知事の要請に対して「(緊急事態宣言は)全国的かつ急速なまん延の恐れがある状況と考えられる時に公示される」と指摘。現在の状況下で限定的に実施することは「趣旨から言って合理的なのか、感染対策として必要かつ十分なのか、慎重な検討が必要である」と札幌市を対象とした宣言の発令に消極的な姿勢を示している。

感染防止というよりも、法律の解釈が優先されている気がする。家事が起これば消火が最優先だ。池の水をかけるか、水道水を使うか議論する暇はない。加藤長官の発言は、水道法の趣旨に照らして水道水を使うことが適切であるかどうか、慎重に検討する必要があると言っているに等しい。新型コロナウイルスの感染防止に向けて政府や国会ではこれまで様々な対策が議論されてきた。そんな中でどういうわけか、最悪の事態を想定した対策にはほとんど手がついていない。個人の権利を強制的に制約するロックダウンの法的根拠がないことなど、その典型例だろう。憲法改正など様々な問題が絡んでくるという事情もある。だが、それ以前に、火事を消す前に議論と検討が必要な為政者(主流派)の発想そのものが、後手を踏んでいるのではないか。とにかく水をかける、それを優先しないとコロナとの戦いには勝てない。札幌に限定した宣言の発令を望む。