新型コロナウイルス感染拡大が収まらず、東京五輪・パラリンピックの予定通りの開催に弱気の声が与党に広がりつつある。菅義偉首相の開催方針は揺らいでいないが、7月23日の開幕まで2カ月余りとなっても感染収束の兆しは見えず、自粛生活を強いられる世論の反対も根強いためだ。

 開催に悲観的な声が与党内に目立ち始めたのは、大型連休明けのことだ。首相に近い自民党幹部は「開催はちょっと難しい」と漏らし、中堅議員も感染力の強い変異ウイルスの拡大を理由に「厳しいかもしれない」と語った。

 こうした見方が強まっているのは、3度目の緊急事態宣言でも期待された効果が見られず、期間延長と対象地域の拡大を迫られたことが大きい。国民の「自粛疲れ」を反映し、各種世論調査でも半数程度が中止を求める。来日した各国代表団でクラスターが発生、医療崩壊を招けば、秋までにある衆院選で与党に逆風となりかねない。

 主催者である東京都の小池百合子知事が「中止にかじを切るのではないか」との根拠のない臆測も絶えない。自民党関係者は7月の都議選に触れ、「小池氏が五輪中止を争点に掲げる恐れがある」と警戒。都議選を重視する公明党の中堅は「中止すれば大きな争点の一つを消すことができる」と期待混じりに話す。

 閣僚経験者からは「秋まで延期すればいい」との声も上がる。ワクチンがある程度行き渡り、感染収束も望めるからだ。だが、ベテラン議員は「延期は施設面やアスリートの心情面でも難しい。ここでできなければ中止だ」と安易な弥縫(びほう)策を戒める。

 とはいえ、与党の大勢は依然、開催支持だ。自民党の細田博之元幹事長は13日の細田派総会で、「多くの人の『なんとか成功させて』という期待に応えるのが使命だ」と訴え、ある衆院議員は「外国選手の不参加で『国民体育大会』のようになってもやるしかない」と悲壮感を漂わせた。

 五輪開催には野党も含めた反対論ばかりが目立つものの、「成功」と評価できる結果に持ち込めれば、政権に追い風になるとの観測も根強い。首相の衆院解散戦略も、まさにそこにあるとみられている。首相は13日に面会した森田健作・前千葉県知事から「五輪やるでしょ」と聞かれ、「やるよ」と言い切った。