まがりなりにも自由で開かれた価値観を共有する陣営にいるせいだろうか、次のようなニュースに接するとなんとなくホッとする。「G7外相、共同声明でベラルーシ非難 反体制派の即時解放求める」(ロイター日本語版)、「国連機関、ベラルーシの民間機強制着陸を調査へ 来月中間報告」(同)。逆に「香港、選挙制度見直し条例可決、『愛国者』統治を確実に」(同)、これを読むと強権主義者が支配する国の非人道的な振る舞いに反吐が出るほど嫌悪感を感じる。いずれも今朝見たニュースだ。前者は強権的な独裁者・ルカシェンコ大統領率いるベラルーシが25日、反体制派ジャーナリスト、ロマン・プロタセビッチ氏が搭乗している民間旅客機を強制着陸させ、このジャーナリストを拘束したニュースに関連したもの。G7外相会議や国連の専門機関である国際民間航空機関(ICAO)が批判の声をあがたというものだ。

後者は言うまでもない中国・習近平国家主席が主導する香港弾圧の総仕上げともいうべき選挙制度の見直し法案が成立したというニュースだ。同じようなニュースは大袈裟に言えば掃いて捨てるほどある。バイデン大統領がきのう情報機関に指示したコロナウイルスの発生源を巡る再調査もその一つ。中国の武漢研究所を含め、発生源に関するより詳しい調査を命じた。北朝鮮の人権弾圧、イランを巡る核協議、中国のウイグルやモンゴルの人権問題、ミャンマーのクーデターもそうだろう。数え上げたらきりがない。この地球は「自由で開かれ、国際法を尊重する」陣営と、これを無視して強権的、独裁的にふるまう独裁者の国に分かれているかのようだ。自由で公平で平和な社会を築くためには、価値観を共有する国々は一致団結して強権主義の陣営と対峙しなければならない、いつもそんな思いを強くする。

だが、次のような指摘に接すると共有する価値観がぐらつく。ICAOの会合で中国とロシアの代表は、強制着陸に関する調査に反対した。その理由として関係筋は次のように述べたという。「米政府が2013年に、情報収集活動を暴露したエドワード・スノーデン容疑者が搭乗しているとみられた旅客機をオーストリアに着陸させたことに言及し、ミンスクで起きたことは異例の出来事ではないと述べた」(ロイター)というのだ。オバマ政権の時代の出来事だ。事実関係は判然としない。スノーデン氏は香港からロシヤへ逃亡したが、その過程の出来事なのだろうか。いずれにしろ「価値観を共有する国々」にも“不都合な真実”がいっぱいある。強権主義者たちも、彼らは彼らなりに価値観を共有しているのだろう。結局は異なる価値観のせめぎ合いということになる。どちらも負けられない。ここに人類の“宿痾”があるような気がする。