コロナ対策をめぐって様々な動きが続いている。まずオリパラの観客上限が決まった。5者協議を経て観客数の上限は、全会場で収容定員の50%以内で1万人を原則とすることで決着した。感染が急拡大して緊急事態宣言が発動された場合は無観客とする方針も確認された。一方でWHOは大会組織委員会や国際オリンピック委員会(IOC)と週内にコロナ対策について再度協議するとの方針を明らかにした。検討項目は「診断、検査、監視、物理的距離、換気など」と多岐にわたっている。いまさら、という気がしないでもないが、用意周到、準備することはいいことだ。文科省は中学生や高校生に対するワクチンの集団接種について、「現時点では推奨するものではない」との指針をまとめた。集団接種となれば事前に保護者に説明しなければならなし、同調圧力もかかる。推奨しないことも1つのあり方だろう。

菅首相がオリパラの観客に対して「直行直帰」を要望している。箸の上げ下げとまでは言わないが、細かいことも取り上げる。これも人流抑制への配慮なのだろう。コロナに五輪が絡むととにかく準備が大変だ。オリパラを止めれば、準備の負担はかなり軽くなる。とはいえWHOで緊急事態対応部門を統括するマイケル・ライアン氏は、「日本の過去1週間の100万人当たりの新型コロナウイルス感染者数は80人と他の多くの国と比べてはるかに低い」(ロイター)と指摘する。オリパラを中止することにも国際的なリスクが伴う。この時期、やっても、やらなくても批判は出ると思う。来年には北京五輪も控えている。将来的に感染症の脅威が繰り返されることもあるだろう。個人的には「安心、安全」の前例を作ること、それにはそれなりの意味があると思っている。

だが、世の中には全く違う意見もある。「科学的知見を踏みにじる『独善と暴走の象徴』になりかねない。とても納得できない」と強い言葉で異論を展開する人もいる。「科学的知見を踏みにじる」と、無観客を推奨する専門家の意見を無視したことに腹を立てている。これは22日付の朝日新聞の社説である。論説委員室を舞台に朝日新聞を代表する叡智が集って議論した結果がこれだ。「都合のいい話の時は専門家を尊重し、そうでなければ取り合わない」、これは菅首相批判だろう。いかにも朝日新聞らしい上から目線の断罪だ。朝日新聞が決定に異を唱えることに異を唱えるつもりはない。だが、都合のいい時に都合のいいことしか書かない、朝日新聞も同根異才と言うべきではないだろうか。「安心、安全」の結果はわからない。結果が悪ければ菅首相は責任を取るしかない。結果が良いとなった時、「独善と暴走」と断罪した朝日新聞の責任はどうなるのだろう・・・。