東京都を対象とした緊急事態宣言の4度目の発令がきのう決まった。緩めたり締めたり、忙しいことだ。「宣言」と「重点措置」にさほどの違いがあるわけではない。だが、宣言を発令すると不思議と感染者数が減少傾向をたどる。どうしてこうなるか、専門家に解説して欲しいところだ。個人的には「宣言」効果だと思っている。説得力のある説明ができる政治家や専門家が一人でもいれば、「宣言」など出すまでもなく感染者が減るだろう。そんなパワーのある政治家や専門家は日本だけでなく世界中探しても見当たらない。だから法律に定められた「宣言」は有効なのだろう。宣言の効果は日本が法治国家であることを証明している。それにしても日本のメディアのなんと嘆かわしいことか。今朝のニュースを見ながら改めて実感した。

朝日新聞のサイド記事の見出しは「首相裏目 宣言下の五輪」。社説は「4度目の宣言、矛盾する『発信』に懸念」、いつものように天の声だ。時事通信は「信頼損ねた政府対応 緊急事態宣言」(時事ドットコム)。この記事を読むと旧態依然とした記者感覚で溢れている。3回目の宣言解除の経緯を記した上で、「今日の結果を見れば、政府の想定と現実との乖離(かいり)は明らかで、見通しの甘さは否定しようがない」と一刀両断に断罪する。書いている記者はさぞ気持ちがいいだろう。結果が出てからの断罪だ。全部の紙面を検証したわけではないが、こうした感覚が日本メディの大勢のような気がする。日経新聞(Web版)に次のようなコメントが載っている。英国では1日の感染者が今月中に5万人になるとの予想がある。そんな中で規制の解除が検討されている。木村恭子編集員のコメントだ。

英国政府が国民に訴えたのは、①陽性者の伸びは指数関数的ではない②死者や重症者は増えていない③ワクチン接種も進み以前とは状況が違うーこの3点だという。きのうの会見で菅首相は「困難に直面する今だからこそ世界がひとつになり、人類の努力と英知で難局を乗り越えていけると東京から発信したい」、「未知の敵との闘いは私にとっても心が休まるときはない」。しかし、こうした発言の意味はメディアにまともに読み解かれることはない。菅首相を擁護するわけではない。危機の中でこそ「安心安全な大会を実現する」、その意気込みが日本の将来を左右すると言いたいのだ。いまから何十年後、後世史家が日本衰退の原因を紐解いた時「21年五輪」に注目するだろう。世論が分裂し、リスクを回避し、世界への発信をやめて自分の殻に閉じこもる、日本人の萎縮した姿の先駆けをそこに見出すからだ。誰も気付かないが、日本人というか、メディアの心理はすでに完全に“落ちぶれている”。