韓国の文在寅大統領はきのう、オリンピックに合わせて実現しようとしていた日韓首脳会談を見送ると発表した。この間、水面下でさまざまな駆け引きが行われていたようだ。メディアを通じて漏れ伝わってくる情報を見ているだけでも、韓国側の主張の手前勝手さが手にとるようにわかった。元韓国駐在大使の武藤正敏氏がGoogleニュースで詳細な経緯を紹介している。詳しくはそちらを読んでもらいたい。この件に関して個人的に気になっているのは、水面下の交渉をめぐって明らかな誤報があったことだ。誤報を流したのは私の知る限りTBSと読売新聞。ど素人が見てもセンスというか、筋の悪い記事だった。報道機関2社にあえて韓国寄りの記事を書かせたソースは誰なのか、首脳会談よりそっちの方が気になった。

オリンピックを前に文政権は、首脳会談の開催を盛んに呼びかけてきた。会談の前提条件として「日本と解決しなければならない3大懸案のうち、最低1つに対してでも誠意のある議論が行われことが必要だという立場であった」(武藤氏)。3大懸案とは①慰安婦・徴用工問題②戦略物資の輸出規制強化問題③福島第一原発処理水の排出問題だそうだ。誰が3大懸案と決めたのか。韓国政府が勝手に決めただけである。日韓の間に横たわる問題は日韓協定、竹島問題、自衛隊機に対するレーザー照射問題など数え上げたらキリがない。開幕を間近に控えたオリンピック関連でも選手村に掲げた横断幕(秀吉の朝鮮出兵に勝利した李舜臣将軍を連想させるもの)、日本食のボイコット(間接的に福島産魚介類の放射能汚染を連想させようとしている)、聖火リレー用の地図に竹島が表記されているとの抗議など、根掘り葉掘り文句をつけている。

これらはいずれも政権の支持率アップを狙った“自慰的”行為なのだろう。誰が見てもそう見える。だから在韓日本大使館の相馬弘尚総括公使もJTBCテレビ記者とのオフレコ懇談の場で、「(韓国政府は)マスターベーションをしている」(同)とつい本音を漏らしてしまった。事実はその通りなのだが、オフレコ懇談といえども外交官は絶対に口にしてはいけない言葉だ。韓国はすかさず相馬公使に対する「可視的で相応の措置」(同)を求めてきた。要するに解任せよとのことだ。こんな騒動も付随して首脳会談は見送りとなった。当然だろう。以下は余談。TBSと読売は交渉の真っ最中に、「大統領訪日へ」という記事を流している。読売の記事(Web版)は19日付、見送りを正式に発表したのが20日だから、ご丁寧にも直前に誤報を流したことになる。素人目にも無理筋の首脳会談、渦中に「首脳会談を行う方針を固めた」と記事にした読売の狙いはなんだったのだろう、むしろそっちの方が気になった。