ポスト菅をめぐる動きが本格化している。菅首相の突然の退任についてはすでにいろいろな見方が飛び交っている。諸説に異論を挟むつもりはないが、菅首相は日本中にはびこる縦割りの利権構造に小さな楔を打ち込もうとしていた事実は付記しておきたい。デジタル庁の発足、カーボンゼロ宣言、携帯料金の引き下げ、ハンコの廃止、不妊治療への保険適用拡大など、短期間に打ち出した政策の根っこは「利権潰し」だった。コロナにも利権は巣食っている。ワクチンの開業医による個別接種を強行に主張していた日本医師会はその最たるもの。歯科医師による接種容認などワクチンの集団接種に道を開いた菅首相の腕力は高く評価すべきだろう。日本の主流メディアはこの動きをほとんど無視している。“聖域なき改革”を掲げていた安倍政権にもできなかった利権潰し、それを菅首相はそろりとやってのけた。評価すべきは評価する。その姿勢が日本のメディアには必要だろう。

さてポスト菅はどうなるのか。今朝の読売新聞の世論調査によると、次の首相にふさわしい政治家のトップは河野太郎行政改革相(23%)となっている。ついで石破茂・元幹事長(21%)、岸田文雄・前政調会長(12%)の順だ。4位以下は、小泉環境相(11%)、安倍氏(5%)、高市氏(3%)、野田氏(2%)の順。この順番は何を意味しているのだろうか。既成の永田町勢力から遠い順番、裏返せば有権者・庶民に近い順番ということではないか。河野氏が本当に庶民に近いかどうかはわからない。だが、これまでの言動からそうみられているのだろう。河野氏は麻生派だが、麻生派を代表するという意識はない。同氏を推す中核部隊は永田町のボス達ではなく、これからボスを目指す若手だろう。これが総裁候補としての河野氏の“売り”になる。仮にそれに反するような政治行動をとれば、世論調査での人気は一気に萎むだろう。

既存の派閥は今度の総裁選を機に事実上解体するのではないか。最大派閥の細田派(安倍派)は、安倍氏が高市氏を推薦することによって派閥としての結束力が維持できなくなる。麻生派もすでに派内は「ボロボロ」(麻生氏)のようだ。岸田はかろうじて結束を保っているが、選挙の結果によってはどうなるかわからない。世界中が多様化する中で、派閥の結束力なんて無用の長物だ。とはいえ政治家が群がることをやめるわけがない。新しい派閥、あるいはいままでにない政策集団のようなものに発展的に解消できれば、きたるべき総選挙で圧勝するかもしれない。要は政治家も政策もイノベイティブにバージョンアップする必要があるということだ。野党が相変わらず旧態依然としているだけに、自民党にとってはまたとないチャンスの到来でもある。もはや自民党に安倍氏も麻生氏も二階氏もいらない。新しい勢力による新しい顔が必要な時代を迎えている。