習近平主席が指示した格差是正のための「共同富裕」、米テキサス州が州法で決めた「中絶禁止」、相互になんの関連性も共通性もないのだが、どこか似ている気がする。現状を変えるために規制を強化する習主席、民主党を意識して中絶禁止を徹底する共和党知事のテキサス州。どちらも背景にあるのは政治だ。権力闘争の一環としての規制強化という点では同質性がある。半面、民間企業が絡むと異質な動きになる。規制の強化か緩和か、どちらを選ぶにしても政治的には大きなテーマだ。対立が深刻化する米中が個別に進める規制強化。体制が違っても政治的な目的は一緒のようにみえる。この流れはこれから世界の潮流になるのだろうか。すぐに頭に浮かぶのは移民の入国規制強化だ。これに民間企業が絡むとどうなるか、米中の最近の事例が示している。

中国の「共同富裕」についてはいまさら説明するまでもない。この動きの特徴は格差是正に止まらずIT企業や教育産業に対する規制強化、ひいては映画やドラマの人気俳優など富裕層を象徴するヒーローやヒロインの否定につながっている。経済にとどまらず文化活動を巻き込んだ整風運動、これが毛沢東の文化大革命相当する言われる所以だ。ロイターによると中国のEコマース最大手であるアリババは、「2025年までに1000億元(155億ドル)を投じ、習近平国家主席が推進する『共同繁栄』を支援する」と報じられている。一方のテキサス州。この州は州政府のトップが共和党だが、9月1日から人工妊娠中絶がほぼ全面的に禁止された。今朝配信された記事によると、「州法が発効したことに対し、米企業から厳しい批判や独自の対抗策の表明が相次いだ」(ロイター)とある。

テキサス州の州法は、中絶を「『助けたり、そそのかしたりした』人を無関係の個人が訴えることができるという仕組み」(ロイター)のようだ。「中絶のために医療機関に向かう女性を知らずに乗せたタクシーの運転手も、(見ず知らずの他人から)訴えられる可能性がある」(同)。中絶禁止法の対象は本人だけではない。意図的でない“協力者”も対象になる。このため配車大手のリフトやウーバーは「訴えられた場合、訴訟費用全額を負担すると表明」している。同じ民間企業でも中国のアリババの目線は習主席のご機嫌をうかがい、米企業は従業員に視線をむける。「共同富裕」も「中絶禁止」も目的には同質性があるが、対象となる企業の視線は180度異なる。これが社会主義か自由主義かの違いだろう。似て非なるはずの米中はある意味「同質」でもある。だが、統治の対象となる企業や市民の目線はかぎりなく「異質」。どちらに与するか、言うまでもない。