中国の金融規制当局は、深刻な資金難が続く不動産開発会社、中国恒大集団に対して幅広い指示を発した。建設中の物件を完成させること個人投資家への債務を返済することに集中的に取り組むとともに、ドル建て社債で目先のデフォルト(債務不履行)回避に全力を尽くすよう求めた。

  当局は中国恒大の担当者との最近の会合で、デフォルト回避のため先を見越して社債保有者と連絡を取るよう指示したが、具体的な助言は与えなかったと、事情に詳しい関係者1人が述べた。中国恒大はドル建て社債で8350万ドル(約92億円)のクーポン支払いが23日に期限を迎えるが、30日間の猶予期間がある。

恒大の建設中の住宅。北京で。9月17日撮影Photographer: Gilles Sabrie/Bloomberg

  当局が支払いに関する資金支援を提案したのか、またオフショア債権者に最終的に損失を負わせるべきだと考えているかどうかは不明だ。当局は中国恒大債の保有者について情報を集めていると、慎重に扱うべき情報だとして関係者が匿名を条件に述べた。

  この当局指導は中国恒大問題の結末がどのような形になるのか手掛かりにはなりにくいが、金融市場を揺るがし成長の足かせとなり得る同社の破綻を政府が当面は回避したい考えであることはうかがわれる。中国恒大に債務危機解決の時間を政府が与える兆候が見られれば、中国内外の投資家の不安は和らぐ可能性がある。

  中国恒大のドル建て社債を保有する2者は、香港時間23日午後5時の時点で同日が期日のクーポン支払いをまだ受けていないと明らかにしている。

中国恒大のドル建て債保有者、23日期限の利払いまだ受けていない

  中国当局が中国恒大について沈黙を守っているため、同社の運命は不透明だ。ダウ・ジョーンズ通信(DJ)は23日、当局が地方レベルの政府機関と国有企業に、中国恒大が秩序立った問題解決ができない場合に最後の瞬間にのみ介入するよう求めたと報じた。当局は中国恒大救済を避けたい考えを示唆したと、協議について知る当局者を引用して伝えた。

中国当局、中国恒大の破綻の可能性に備えるよう地方政府に指示-報道

  中国恒大の苦境は不動産業界の過剰債務圧縮を促すと同時にモラルハザードを避けようとする習近平政権の政策が一因だが、経済および社会の安定を脅かす無秩序なデフォルトを政府が座視する公算は小さい。中国人民銀行(中央銀行)のここ数日の大量資金供給は、当局が既にセンチメント改善を重視していることを示唆する。

香港で中国不動産株上昇、恒大が一時32%高-人民銀は流動性供給

  中国恒大と人民銀、金融および住宅規制当局はコメント要請に応じていない。

  中国恒大は22日、翌日が期日となる人民元建て債のクーポン支払いについて、「クリアリングハウス外での交渉によって解決された」と発表した。デフォルトと定義されることなく支払いを延期することで本土債の保有者と合意した公算が大きいとアナリストらは推測している。

  ドル建て債保有者と同様の合意ができるかどうかは分からない。同社債の一部は富豪で中国恒大創業者の許家印会長およびその知人が保有している可能性が高いが、保有者には世界的な運用会社なども含まれ、支払いを巡る不透明な取り決めに加わることは望まないかもしれない。

原題:China Urges Evergrande to Avoid Default, Repay Retail Investors(抜粋)