巨大な不良債権を抱えて連日メディアを騒がせている中国の恒大集団。先週末に支払日を迎えた社債の利息が支払われず、30日の猶予期間に突入した。この間に利払いが実施されなければ、不良債権と認定されデフォルト(債務不履行)が宣言される。これで同社は事実上倒産する。負債総額が30兆円を超えるといわれる巨大企業が倒産すれば、中国経済にとどまらず世界の金融市場や経済に多大な悪影響が出ると思われるのだが、メディアを通じて伝わってくる多くのアナリストのコメントは「この問題が広範な危機に発展する可能性は小さい」と楽観的なものが多い。リーマンショックは世界中を瞬時に危機に陥れた。恒大集団のデフォルトはとてもではないがその規模には及ばない。なぜなら中国の国内に限定した固有の問題だからだという。果たして本当にそうなのだろうか。

例えばFRBのパウエル議長は22日の公開市場委員会(FOMC)後の記者会見で、恒大集団の債務状況に関するコメントを求められて次のように答えている。「米市場への影響という意味では、米国への直接のエクスポージャーは多くない。中国の大手銀行もそれほど大きな影響を受けていない。ただ、世界的な信用供与チャネルを通じて世界の金融情勢に影響が及ぶようなことは懸念される。(その上で)米国の企業部門と同列に考えることはない」(ロイター)と語っている。リーマンブラザースの倒産は、同社が発行したサブプライムローンという金融商品を個人だけでなく世界中の金融機関が保有していた。これはデリバティブ技術を使った派生商品だが、同社の倒産でこの債券が紙屑になり、世界中の金融機関が巨大な損失を被った。いわゆるシステミックリスクである。リーマンショックはあっという間に世界中を景気撃沈という奈落の底に落し入れた。

中国恒大集団も理財商品(サブプライムローンのようなもの)を通じて個人投資家から莫大な資金をかき集め、それを不動産開発に惜しみもなくつぎ込んできた。需給に関係なく、価格を引き上げるために不動産開発を続けてきたとも言える。言い方は悪いがバブルを維持するためにバブルを積み上げてきたのである。明らかに虚構の構図の上に成り立っていた不動産事業だ。パウエル議長が指摘する通り、金融機関が資金提供したわけではない。代わりに個人や地方政府が虚構の構図の上で、一時の宴に酔いしれていたのである。これが弾けることは中国固有の限定された問題だろうか。いまや中国は米国に次ぐ経済大国である。ロイターによると、中国では家系資産の40%が不動産で占められている。そこが弾ければ14億の中国人に甚大な影響が及ぶ。それでも世界経済は耐えられるだろうか。何よりもこの構造を推進してきたのが、最近でこそ「共同富裕」を装う習近平主席その人である。中国だけではない。世界経済の先行きが危うい。