世の中には常にリスクがつきまとっている。今朝メディアが報じている足元のリスクを思いつくままに取り上げれば、中国恒大集団グループの倒産リスク、米国債のデフォルトリスク、アフガニスタンが国際テロの拠点になるリスク、物価やエネルギー価格の高騰リスク、新型コロナの第6次感染拡大リスク、景気低迷に少子高齢化、社会保障の崩壊リスクなど、数え上げたらキリがない。人間不慮の事故や災害でいつ死ぬかわからない。それを無視してリスクを心配しても意味がない。そんな批判も聞こえてくる。それはそうだと思いつつ、だが、しかしと思い直す。リスクを心配するのは古今東西、人種を超えて人類が受け継ぐ遺伝子のような気もする。リスクを扱えば本も記事も、情報は売れるのだ。だから以下のような記事が時々メディアに登場する。「ウォール街の3巨人、次の大きなリスクを警告-ウッド氏はデフレ予測」(ブルームバーグ)

キャシー・ウッド氏はアーク・インベストメント・マネジメントの創業者で、現役のファンドマネージャーだ。彼女が5年先、10年先のリスクとして真っ先に挙げるのは「大きなデフレ圧力の高まりだ」。昨今インフレが金融関係者の最大の関心事だが、同氏はそれ以上にデフレがリスクだと強調する。デフレ化する要因はいろいろあるが、キャッシー氏がいの一番にあげるのが「イノベーション」である。「AIを活用した製品が多数生まれ、より品質が良く安価で創造力に富む製品がより速く出てくる」。これにより「必要な費用と時間が大幅に短縮された」ことで、経済はデフレ化すると警告する。デフレは格差を拡大し、雇用や賃金の減少を招く。指数関数的に進化する科学や技術のデジタル化、そんな社会はデフレ化しやすい。これにどう備えるのか、いまのところ誰も答えを見出していない。

資産運用会社であるアリアンツの主任経済顧問であり英ケンブリッジ大クイーンズカレッジの学長であるモハメド・エラリアン氏は、「最も大きな懸念事項は、国内、国家間の両方で見られる格差だ」と指摘する。「格差が極めて広がった社会は経済的に健全な社会ではない」と。その通りだろう。だが、5年先、10年先の格差拡大を阻止する術はいまのところ見当たらない。中国の習近平主席は「共同富裕」を提唱するが、恒大集団の処理を間違えると「共同貧困」を招くと指摘する専門家もいる。岸田新総裁の「新しい資本主義」「分配改革」で格差がなくなるかもか。可能性というか、線が細すぎる気がする。グッゲンハイムインベストメンツ会長のスコット・マイナード氏は、「一番のリスクは、世界的な決済システムの持続可能性だ」と訴える。同感。だが、リスクに怯むこともない。楽観主義者曰く、「リスクがあるから進歩する」。