日本最大の労働センターである連合の新会長に芳野友子氏が就任した。正式に決まったのが6日、定期大会で新会長に選出された。きのう初めて記者会見を行った。日本の労働組合史上、女性が中央組織のトップに選出されたのは初めてのことだという。それにしてはメディアの扱いがやや地味な気がする。芳野氏がどういう人柄でどんな主張や意見を持っているのかよく知らない。個人的にはだいぶ前から連合をはじめ労働組合運動に懐疑的で、非自民の細川政権や民主党政権の樹立に奔走したころの勢いはいまの連合にはないとみる。もっとはっきりいえば、いまの若い人たちと同じように、連合をはじめ労働組合の運動にたいする関心を失っていた。そんな個人的な状況の中で芳野新会長が就任した。

芳野会長の就任に合わせて連合の動きに少し注目してみようかと思っている。女性会長ということもさることながら、これまで大企業や官公労中心に選出されてきたトップが今回は、中小企業の労組でつくる産業別組織の出身者であること。離合集散を繰り返す労働運動の中で反共産の立場を鮮明にしていること、岸田首相や枝野立民代表と面識がないことなどに興味を感じた。私が知らなかっただけかもしれないが、芳野氏の会長就任にはニューフェイス感がある。歴代の連合会長は建前で弱者に寄り添いながら、実態は華麗な“労働貴族”といった印象だった。消費増税を容認し、非正規雇用の拡大に体をはって反対しなかった。そしてなにより春闘での徹底した戦いを放棄してきた。安倍政権時代には労使交渉の春闘を政治との駆け引きに利用した。いや、利用されたのだろう。連合が体を張った春闘から撤退したあと、日本中の家計は痩せ衰えたのである。

芳野氏も所詮は組織の一員であり、初めて女性会長が誕生したからといって組合運動の過去や未来が一瞬にして変わるわけもない。だが、男性より女性の方がはるかに現実的な感じがする。財布が軽くなった現実は労働貴族の男性会長よりは遥かに敏感に感じるだろう。政府や企業のトップに対する忖度も男性よりは少ないだろう。共産党を排除しながら国民民主党と立憲民主党に分断された政治状況の改善を口にする。最近の指導的立場にある男性はおしなべて「言語明瞭にして意味不明」な人が多い。それに比べると芳野氏には一点の曇りもないように感じる。自民党総裁選を争った保守の論客、高市氏の裏返しのような存在かも。消費税に対する見解はよくわからないが、連合の最大の責務は大幅なベアの獲得である。日本経済の再生のためにも家計の復活が重要だ。岸田首相のお株である「令和版所得倍増計画」を横取りするような活躍、まずは来年の春闘に期待してみることにする。