恒大集団の不良再建問題で揺れる中国が、不動産課税(固定資産税)の導入に動きはじめた。不動産市場が冷え込む中で「大丈夫だろうか」、素人でも心配になる。これから先紆余曲折はあるだろう。ことの推移を注意深く見守る必要がありそうだ。前日の22日に日経新聞は、中国の金融当局が不動産関連の融資規制を緩めているとの記事を掲載している。規制を緩めているのか強化しているのか、こんな単純なことでも見方が分かれる中国。これが正しい情報がタイムリーに公開されない中国を考えるうえでの難しさだろう。不動産課税の強化、見方によれば強硬な習近平主席に対する懐柔策のようにもみえる。それはひとまずおくとして、とりあえずは課税強化策。朝日新聞(デジタル版)はきのう、「中国の全国人民代表大会(全人代)常務委員会は23日、日本の固定資産税にあたる『不動産税』を一部都市で試験的に導入することを決めた」と報道した。

試行期間は5年。『共同富裕』を掲げる習近平指導部は、「不動産市場の安定や格差の解消のために本格導入を目指す考えとみられる。(北京=西山明宏)」とある。「でも、中国は全ての土地が国有のはずだが…」、最初に思いついた疑問がこれ。「中国では土地は基本的に国の所有物であるため、個人や企業は土地の使用権を国から購入して建物を所有している。土地も対象に含めた固定資産税は課されていなかった」(朝日新聞デジタル)。なるほど。課税対象は?「土地の使用権を持つ人や住宅など建物の所有者。農村の住宅などは含まれない」(同)という。細かい実施要綱は今後政府が決めるが、農村や比較的貧しい層を除外する可能性がありそうだ。要するに習氏が提唱する「共同富裕」政策との整合性を図るということだろう。それでも中国人の資産の大半は不動産だというから、実施されれば影響はかなり広範に及ぶことになる。

おそらく中国経済の先行きだけではなく、ひょっとすると世界経済にも大きな影響が及ぶかもしれない。それはそれで大変な事態になりそうな予感がする。だが、ここで恒大集団の“突然”の利払い実施の件が頭に浮かぶ。9月末に支払えなかった社債の利息を、猶予期限ギリギリの今月22日に満額支払った。系列企業の株式売却など資産の売却交渉が破断した直後の利払いである。これに合わせたかのように中国人民銀行は「不動産融資規制に誤解があると」と表明、規制緩和を示唆している。素人的に勘ぐれば恒大集団の利払いを可能にする融資が中央銀行の指導の下に行われたのではないか、勘ぐりたくなる。傍から見ているだけでは中国の深層はわからない。資産課税の強化も「共同富裕」を“建前”にした習氏の権力闘争に対する忖度だとしたら、この件に関しメディアが伝える多くのニュースはフェイクということになる。