総選挙の党開票日まであますところあと3日。けさは日経(Web版)が「自民が単独過半数の攻防、与党で過半数の勢い」、読売(同)が「自民党の単独過半数は微妙、立民が議席増・維新勢い保つ」と終盤の情勢を伝えている。主流メディアの選挙報道で目立つのが「勢い」という表現だ。今週初にサンケイと朝日が中盤の選挙情勢を記事にしていた。面白かったのはサンケイが「立憲民主党に勢い」と報じ、朝日が「自民党に勢い」と報じていたことだ。菅政権で内閣官房参与を務めていた高橋洋一氏によると、こうした現象のことをアンダードック効果というのだそうだ。勝って欲しい政党を「弱い」と表現し、負けて欲しい相手を「強い」と持ち上げる。そうすると有権者の間に「弱い」と報道されたところを応援したくなるという心理が働くのだそうだ。一種のマインドコントロール。いかにもサンケイと朝日らしい報道のしかただ。

選挙戦も終盤になったが私の周辺は極めて静かだ。候補者の選挙カーも見かけないし、政党の街宣車が名前を連呼する騒々しさもない。私の選挙区では衆院選と同時に市長選挙、市議会議員の補欠選挙が同時に実施されている。裁判官の国民審査を加えれば、日曜日には4つの投票権を行使することになる。その割に選挙特有の騒々しさがない。ときどき候補者の事務所から電話がかかってくるが、留守電にしているので出ることはない。衆議院選挙の候補者と所属政党ぐらいはわかっているが、どんな人物でどんな政策を訴えているのかまったく知らない。まして市長選や市議会議員の補欠選挙となると候補者名すらわからない。選挙カーも来ないし立会演説会もない。候補者からの接待もなければ買収も投票依頼もない。投票権はあるが選挙活動から完全に見捨てられた選挙棄民である。

候補者は何をしているのだろう。選挙活動を通じて有権者に政策や自分の思いを伝えようとしているのだろうか。選挙のやり方が変わったのかもしれない。コロナに配慮して活動を控えている可能性もある。選挙期間中なのに選挙以外の余計なことを考えたりする。NHKの政見放送は場面が切り替わった途端にチャンネルを変えるか、スイッチを切る。有権者としては不届きかもしれないが、候補者にしても無党派の有権者に触手を伸ばそうという気迫も気概もない。草の根民主主義は生きているのだろうか、ちょっと気になったりする。個人的にはいつも投票権は行使している。だが、選挙応援も選挙活動もしたことがない。今回の選挙で自分が選挙棄民であることに改めて気がついた。おまけにこの静けさ。選挙違反もないが、選挙活動もない。そういえば、候補者のポスターを貼る掲示板の空白がやけに目立っていた。