英国のグラスゴーで開かれていたCOP26は13日、「グラスゴー気候協定」と題した合意文書を承認して閉幕した。5日にはじまり、会期を1日延長して13日に終了した。会合の成果を盛り込んだ文書も了承された。文書が承認されたこと自体が成果だろう。だが、ゼロカーボンに向けて何が決まったのだろうか。個人的には何も決まっていない気がする。参加各国がそれぞれの“思い”を表明しただけで、参加国が一糸乱れず、勇気を鼓舞して地球の温暖化に立ち向かう、そんな前向きな状況とは程遠いというのが偽らざる印象だ。それでもパリ協定の精神、産業革命時前に比べ気温の上昇を1.5度以内に抑えるという目標を、これからも追求することを改めて確認した。ゼロカーボン実現に向けたハードルはいくつもある。それでも諦めることなく当初の目標を追求する、その気持ちを確認したということだ。それも成果に違いないが、迫り来る地球温暖化の危機に比べると人類の歩みはあまりにも遅々としている。

時事ドットコムによると、スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥンベリさんはツイッターで「COP26は終わった。簡単に要約すると、中身のないおしゃべりだった。だけど本当の仕事は会議場の外で続く。決して諦めない」とコメントしたという。いつもの会議と同じように政治家による駆け引きと政治利用の舞台だったような気がする。極めつけは敵対する米中の協力文書合意だろう。通商摩擦、人権問題、領土問題など多くの分野で敵対する両国が、気候変動問題で今後10年間協力関係を維持するとの共同声明に署名した。温暖化問題を餌に両国の関係改善が模索された証にみえてしかたがない。成果文書で中国はインドとともに、当素案の石炭火力発電の「段階的廃止」という文言に反対、「段階的削減」に変更させた。記者会見で英国のシャーマ議長はこの事実を公表、涙ぐんだという。COPは全会一致が原則。受け入れざるを得なかったということだ。

各国首脳の温度差も歴然となった。習近平主席をはじめサウジ、オーストラリアの首脳は欠席した。バイデン大統領はこれを「間違い」と批判し、オバマ元大統領は「恥だ」と断罪した。協力関係を結んだ相手を痛罵する、これが国際舞台を利用する政治家の高等テクニックか。翻って岸田首相。ゼロ泊2日の弾丸往復でグラスゴーに出席、なんとかメンツを保った。だが新興国支援に5年間で100億ドルの支援を約束したものの、国際会議の場で存在感を示すことはできなかった。いつものようにカネで解決する姿勢は変わらない。早急に新しい資本主義を具体化しないと肝心のカネも持たなくなる。今回の会合では先進国VS新興国の対立に加え、石炭産出国・利用国VS再生エネルギー利用国の対立も本格化した。この対立がゼロカーボンに向けた大問題の解決の障害になりそうな気がする。沈みゆく太平洋の島国ツバルの代表は、「行動が今すぐに必要だ」(時事ドットコム)と涙ながらに訴えた。だが、必死の涙は非情な国際政治によって無視された。