[ニューヨーク 26日 ロイター] – 感謝祭の祝日明けで半日取引となった米国株式市場は、南アフリカで新型コロナウイルスの新たな変異株が確認されたことを受け、薄商いの中、急落して終了した。

世界保健機関(WHO)はこの日、南アで検出された新変異株「B.1.1.529」を「懸念される変異ウイルス(VOC)」に指定。VOC指定は5番目で、ギリシャ文字の「オミクロン」を割り当てた。この変異株に対し既存のワクチンの効果があるか調査が進められる中、欧州連合(EU)や英国を含む世界各地で渡航制限を強化するなどの動きが広がっている。

こうした中、投資家の不安心理を示すシカゴ・オプション取引所(CBOE)のボラティリティー・インデックス(恐怖指数、VIX)は3月初以来の水準に上昇した。

新変異株への懸念から、クルーズ運航大手のカーニバルロイヤル・カリビアン・グループ、ノルウェージャン・クルーズ・ライン・ホールディングスは10%を超えて下落。ユナイテッド航空、デルタ航空、アメリカン航空などの航空株も急落した。NYSE・Arca航空株指数は6.45%下落。1日の下落率としては2020年9月以来最大となった。

小売株は2.04%下落。この日は年末商戦の幕開けとなる「ブラックフライデー」にあたったものの、新変異株への懸念が重しになった。

S&P500銀行株は3.87%安。新変異株を巡る懸念が高まる中、米利上げ観測が後退したことを反映した。

エネルギー株は原油安を受け4%下落した。

一方、新型コロナワクチンを製造するファイザーとモデルナは上昇した。ファイザーは6.11%高の54ドルと、過去最高値で終了。モデルナは20.57%上昇した。

コロナ禍の需要の恩恵を受けるいわゆる「巣ごもり銘柄」にも買いが入り、動画配信サービス大手ネットフリックス、フィットネス機器販売のペロトン・インタラクティブ、ビデオ会議サービスのズーム・ビデオ・コミュニケーションズなども上昇した。

ただ、売りは広範に及び、S&Pの主要11部門ではヘルスケア以外は全て1%を超えて下落。ヘルスケアはファイザーとモデルナ<が上昇したことで、下げは0.45%にとどまった。

グローバル・インベストメンツ(アトランタ)のシニアポートフォリオマネジャー、キース・ブキャナン氏は「まるでデジャブだ」とし、この新変異株について悪いニュースが出てくれば、売りが加速するとの見方を示している。