金融庁は26日、みずほ銀行で2月以降にシステム障害が相次いだ問題で、同行と親会社のみずほフィナンシャルグループ(FG)に業務改善命令を出した。経営責任の明確化を求めた上で、ガバナンス(企業統治)の問題は過去に起こした大規模障害にも通じると指摘し、みずほの変われない体質を糾弾した。

Pedestrians are reflected in the logo of Mizuho Financial Group Inc. outside a Mizuho Bank Ltd. branch in Tokyo, Japan, on Friday, Nov. 10, 2017. Photographer: Tomohiro Ohsumi/Bloomberg

  金融庁は発表資料で「社会インフラの一翼を担う金融機関としての役割を十分に果たせなかったのみならず、日本の決済システムに対する信頼性を損ねた」と指摘。その上で「経営陣の責任は重大」とした。

  一方、財務省も同日、みずほ銀に対して外国為替及び外国貿易法(外為法)に基づく是正措置命令を出した。9月30日に起きたシステム障害の際、取引関係者に経済制裁対象者がいないことを事前に確認する外為法上の義務を履行せずに外国送金を実行していた。

  会見した鈴木俊一財務・金融相は「みずほは強い危機意識を持って再発防止に万全を期してほしい」とした上で、「組織的行動力の強化、社内の意識変革などを進めてもらうことが重要だ」と述べた。外為法違反についても「誠に遺憾」と語った。

  行政処分を受けて、みずほFGは坂井辰史社長やみずほ銀の藤原弘治頭取が2022年4月1日付で辞任すると発表した。IT部門を担当する石井哲FG執行役とコンプライアンスを担当する高田政臣FG執行役も辞任する。一連のシステム障害に関する経営責任を明確にし、経営体制の刷新が必要と判断したという。

  また、FGの佐藤康博会長も同日付で会長を退き、同6月に取締役を退任する。グループの経営首脳がそろって退陣することになり、ガバナンス体制の立て直しが急務となる。みずほ銀の頭取には、いったん就任を見合わせていた加藤勝彦副頭取が就く。

  会見したみずほFGの坂井社長は「お客さまをはじめ全ての関係者の皆さまに心より深くおわび申し上げる」と謝罪した。金融庁の指摘については「極めて重く受け止め反省している」とした上で、「今回の命令の趣旨を十分に踏まえ、再発防止策の徹底的な見直しに取り組んでいく」と述べた。

  自身の辞任については「みずほの経営に極めて重大な影響を及ぼしたことに対する責任を明確化すべく、グループトップとして辞任することで責任を取り、けじめをつける必要があると考えた」と説明した。

  業務改善命令では、一連のシステム障害が発生した原因について、危機対応の態勢が不十分だったことなどを挙げた。執行部がIT現場の実態を把握しないまま、19年に約4500億円を投じて本格稼働させた基幹システムの「MINORI」が安定稼働していると「誤認」していたとも指摘した。

  みずほ銀では02年の3行統合による発足時と11年の東日本大震災直後の2度にわたり大規模なシステム障害が発生し、それぞれ業務改善命令を受けている。ガバナンス問題の真因は、これら過去の大規模障害においても通じるとして、「自浄作用が十分に機能しているとは認められない」と断じた。

  システム障害の再発防止策やガバナンス態勢の整備などについての業務改善計画を策定し、22年1月17日までの提出を求めた。

  みずほ銀では今年、現金自動預払機(ATM)の稼働が停止するなど8度のシステム障害が発生。金融庁は9月にみずほ銀とみずほFGに対して業務改善命令を発動した。当面のシステム更新の必要性などの検証を求めた上で、その後も検査を継続していた。