最近メタバースとかメタという言葉をいろいろなメディアで目にするようになった。フェイスブックは企業名をメタに変更した。来るべき「メタバース時代」の先取りだと言われている。さすがザッカーバークというべきか。フェイスブックとして定着している企業名を、馴染みのないメタに変更した。これを勇気というのか、無謀というのか。いまを生きる多くの人が無謀と思っているのではないか。だが時代は確実に進化する。インターネットの世界は日進月歩だ。たとえばブロックチェーンという技術を使ったシステムや商品が、あれよあれよという間に現実の世界に浸透してきた。暗号資産(仮想通貨)はすでに古いのかもしれない。いまの流行りは「非代替トークン(NFT)」だ。これにはバンクシーもかなわないだろう。歴史的瞬間を切り取った一枚の画像が何億円という値段で売買されている。

ところでメタバーストとは何か、いつもの通りググってみた。「コンピュータやコンピュータネットワークの中に構築された、現実世界とは異なる3次元の仮想空間やそのサービスのことを指す」とある。要するにバーチャル・リアリティー(VR=仮想現実)をベースにした仮想空間の中で起こる出来事だ。ひところ世界中のゲームマニアがポケモGO(AR=拡張現実)に熱中した。囲碁・将棋の世界ではコンピューターソフトの方が人間よりも強くなっている。バーチャル(仮想)なものはすでに現実の世界に入り込んでいる。小説や漫画はもともとバーチャルだ。コロナ禍で導入が広まったオンライン診療などもその一つだろう。IT技術の指数関数的進歩によってVとRの壁がなくなりつつある。そしてそのことが、ビジネスの将来を左右する可能性として浮かび上がってきた。これがいま、我々が直面している状況だろう。

数日前、マイクロソフト(MS)は米ゲーム大手、アクティビジョン・ブリザードを約7兆8000億円で買収すると発表した。これもメタバースを先取りした買収と考えて間違いない。世界中の企業がメタバースをめぐって手を打ち始めている。日本はどうか。26日付の日経経新(Web版)に「メタバースの見えぬ価値、無形資産ためるマイクロソフト」という記事が出ていた。MSの買収に絡め、企業価値が大きく変化する可能性を指摘した好記事だ。ソニーとMSを比較し見えない資産(無形資産+のれん代)の規模を測っている。それによると無形資産はソニーが若干上回るが、のれん代(ブランド力や技術力、ノウハウなど)は圧倒的にMSの方が多い。のれん代は「見えない価値」と言い換えてもいいだろう。NFTに価値があるかどうか判断は分かれる。だが、「見えないもの」に価値を認めようとする先見力が、人類の未来を切り開いていくような気がする。同時に何に本当の「価値」があるのか、改めて問われるだろう。