毎朝ニュースを見ている。ニュースが読まれなくなった昨今、限られているとはいえかなりの量のニュースに目を通している。ニュースが真実を伝えていると思っているわけではない。メディアのニュース感覚に違和感を感じながら、それでも世界中で起こっているなにがしかの事実を知る上で、ニュースは欠かせない存在になっている。メディアの報道姿勢に疑念を抱きながらも、かなりの量のニュースと称するものに目を通す、毎日がその繰り返しだ。それでも時々「どうして?」と疑問に感じることがある。ネットで連日“炎上”しているニュースを、国内外といっていいだろう、主流メディアが完全に無視していることだ。いまカナダで起こっている「Freedom Convoy」もその一つ。トルドー首相が提起したワクチン接種の義務化に反対して、トラック運転手が全土で反対のデモを繰り広げている。

世界中で反ワクチン・デモは起こっている。Freedom Convoyもその一つだろう。ネットで初めてこのニュースを知った時、最初はそんな印象だった。だがYou Tubeで詳しい解説を見て驚いた。ワクチンの感染拡大防止にかこつけて政治権力が国民の権利ともいうべき「自由」、まさに「Freedom」を侵害していることに異議を唱えているのだ。そしてこの動きはいまカナダ国内にとどまらず世界に伝播しようとしている。ウイルスと同じだ。国境を超えて拡散し始めている。トラックによる物流はカナダの基幹システムでもある。オミクロン株の急激な感染拡大によってカナダも深刻な運転手不足に直面している。物価は高騰し、サプライチェーンに障害が出はじめている。そんな中で大型トラックの運転手は「自由の侵害」に抗議しているのだ。待遇の改善を求めているわけではない。米国とカナダの国境を越えて物資を輸送する運転手に、ワクチン接種を義務付けようとしているトルドー首相に反旗を翻しているのだ。

タイミング良くとい言うべきか、トルドー首相は濃厚接触者になり自主隔離を宣言した。これが事態の膠着に拍車をかけた。だが、核心はそこにはない。パンデミックにかこつけて政治権力が肥大化していることに、大型トラックの運転手をはじめデモを支援している支持者は危機感を強めているのだ。米国でも同様のデモが頻繁に繰り返されている。「選択の自由」を重視する共和党支持者が中心になっている。そのせいだろうか、「Freedom Convoy」も保守系の人たちに支持者が多いようだ。どちらかといえば革新系が多い主流メディアが今回の動きを無視している原因もそんなところにあるのかもしれない。だが、パンデミックの裏で政治権力は恐怖を煽り、同調圧力を高めようとしていることも事実だ。重症者の映像を流し、国民を心理的に追い込みながらワクチン接種の促進を図る。こうした動きは、行動経済学(心理学+経済学)をベースにした群集心理誘導政策だと指摘する人もいる。本来メディアはそこをチェックすべきだが、大半は「見なかったこと」にしている。