[ロンドン 31日 ロイター] – 英医学誌「ランセット」が編成した国際的な専門家グループは、どのように死ぬかについて、根本的な見直しが迫られており、新型コロナウイルス禍は死に直面した人のケアについて厳しい課題を浮き彫りにしたと指摘した。

専門家グループは、世界の多くの人が死を迎えるにあたり、不必要な苦しみを受けていると指摘。裕福な国では死のサポートでなく延命が求められる一方、低所得国を中心に苦痛を緩和する措置を受けられずに亡くなる人が世界で半数近くを占めるとした。

ランセット委員会は、医療やソーシャルケアの専門家のほか、患者、コミュニティの専門家、哲学者、神学者で構成。

委員会の共同委員長で、苦痛緩和医療のコンサルタントであるリビー・サルノウ博士はインタビューで「死にゆく人々をサポートするバランスをとれた方法をいかに作るか。現時点で、十分な対応をできていない」と述べた。

サルノウ博士によると、委員会は2018年から課題に取り組んでいるが、新型コロナのパンデミックでみられた極端な状況が新たな注目点をもたらした。

博士は、新型コロナの入院患者は治療や苦痛緩和措置を受けられたが家族とはオンラインの面会となった一方、自宅療養者は家族がそばにいたが、苦痛を和らげる薬を入手しづらい例が多かったとし、パンデミックの初期の感染抑制策はバランスのとれたケアの提供が難しかったと述べた。

委員会は「死の新たなビジョン」として5項目を提言。まず死、死への直面、悲しみの社会的決定因子に取り組み、より健全な生き方やより平等な死を考慮することを挙げた。

また死ぬということを生理的事象以上のこととみなし、ケアのネットワークに家族やコミュニティ、専門家を取り込むべきとした。死に関する対話を促し、死ぬこと自体が価値を持つと認識すべきと指摘した。