国会では、21日、衆議院予算委員会で集中審議が行われ、岸田総理大臣は、ウクライナ情勢などの影響で高騰が続く原油価格への対策として、ガソリン税の上乗せ分の課税を停止する、いわゆる「トリガー条項」の凍結解除も含めて、あらゆる選択肢を排除せず、さらなる追加の対策を早急に検討する考えを示しました。

自民党の越智隆雄氏はガソリン税の上乗せ分の課税を停止する、いわゆる「トリガー条項」について「ウクライナ情勢をはじめ国際情勢やエネルギー価格の動向が今後ますます緊迫する可能性を考えると、凍結解除の発動も含めて、あらゆる選択肢を具体的に検討する必要があるのではないか」と質問しました。

これに対し、岸田総理大臣は「松野官房長官のもと、トリガー条項も含めてあらゆる選択肢を排除せず、さらなる対策を早急に検討したい。今後の状況を見据えながら、追加の対策を検討したい」と述べました。

公明党の中野洋昌氏は企業が雇用を維持するための「雇用調整助成金」の特例措置について、来月末が継続の期限であることから「年明け第6波で一気に人流も落ち込み、観光や運輸、飲食やイベントをはじめ、非常に厳しい状況だ。現行の特例措置は維持していく必要がある」と指摘しました。

これに対し、後藤厚生労働大臣は「例のない特例措置を講じ、事業所の雇用の維持を強力に支援してきた。4月以降の取り扱いについて、しっかりと雇用情勢を見極めながら、具体的な助成内容を検討のうえ、2月末までに改めてお知らせをする」と述べました。

また、岸田総理大臣は「今後も新型コロナ対応は喫緊かつ最優先の課題であり、先の見通しが立つように雇用と事業の維持のための支援を取り組んでいく必要がある。4月以降の対応は、新型コロナの感染状況や経済の動向をしっかり見極めながら、早急に方針を検討していきたい」と述べました。

立憲民主党の江田憲司氏は新型コロナ対策の医療の提供体制をめぐり、「第5波のときに、政府が何床確保していますと言っているのに、いざとなったら入院できない『幽霊病床』があった。今回も救急搬送が困難な事案が5000件から6000件もあると言われており、総理が確保したと言ったのは『幽霊病床』ではないか」とただしました。

これに対し、岸田総理大臣は「全国で前回ピーク時の1.3倍の病床を確保し、なおかつ『見える化』を図ることで本当に稼働しているか確認する体制もつくった。しかし、救急搬送などで混乱が生じていることはしっかり受け止めなければならない。用意した病床がしっかりと活用されるよう、さらなる工夫を加えていきたい」と述べました。

日本維新の会の青柳仁士氏はウクライナ情勢をめぐり、「非常に緊張感が高まる中で、日本の安全保障に関する認識を伺いたい。イギリスのジョンソン首相はロシアがウクライナに侵攻すれば衝撃や動揺は世界中に広がり、反響は東アジア、台湾にも及ぶと指摘しているが、どう認識しているか」と質問しました。

これに対し、岸田総理大臣は「ウクライナをめぐる情勢は、欧州のみならず、アジアをはじめ、国際社会全体の秩序に関わる問題で、重大な懸念を持って注視している。世界各国が緊張緩和に向けて努力を行い、ロシア、ウクライナをはじめ関係国に対して働きかけを続けている。日本もその一翼をしっかり担っていきたい」と述べました。

国民民主党の前原 代表代行は株式市場の動向に関連して、「総理が金融所得課税に言及をしたときに株価が大幅に下がる、あるいは自社株買いの規制に言及したときに株価が下がるということで『岸田ショック』と言われてるが、これに対して率直にどう考えているか」とただしました。

これに対し、岸田総理大臣は「株価の動きについてはさまざまな要因があり、私の立場からそれを評価することは控えなければいけない。市場関係者から懸念の声が出ているのであれば、誤解はしっかり解かなければならない。丁寧に説明していかなければならない」と述べました。

共産党の宮本徹氏は「年金は前年の物価の動向が反映されるが、足元はどんどん物価が上がっている。将来世代のことを考えても、年金の水準を低下させていく仕組み自体を改め、ことしぐらいは年金は据え置かなければいけない」とただしました。

これに対し、岸田総理大臣は「将来世代の負担が過重にならないよう、長期的な給付と負担のバランスを確保するのが年金で大事な仕組みだ。そのうえで、物価は政治としてしっかり考えていかなければならない。所得・賃金の引き上げが物価の高騰とともに行われなければ、経済の好循環は実現できない」と述べました。

「トリガー条項」とは

ガソリンには消費税に加えてガソリン税がかけられています。

このガソリン税のうちおよそ半分、1リットル当たりおよそ25円は本来の税額より上乗せされて課税されています。

ガソリン価格が高騰したときにこの上乗せ部分の課税を停止して小売価格を引き下げるのが「トリガー条項」です。

トリガー条項は、ガソリン価格が3か月連続で1リットル当たり160円を超えた場合に発動される仕組みです。

ただ、東日本大震災の復興財源を確保するための特例法によって2011年、平成23年からこの条項の発動は凍結されていて、政府は凍結を解除するには法改正が必要だと説明しています。

松野官房長官 「凍結解除 現時点で考えているわけでない」

松野官房長官は、午後の記者会見で「エネルギー価格が高止まりし将来の先行きも不透明な中で、これまでの支援策の検証を踏まえつつあらゆる選択肢について排除せず関係省庁で検討を進めていく必要があり、国民生活や日本経済を守るために具体的な対応策の検討を進めていきたい」と述べました。

そのうえで「トリガー条項の凍結解除については現時点で考えているわけでないが、他方で、今後、原油価格高騰の事態が長期化する場合には、何が実効的で何が有効な措置かという観点から、トリガー条項を含めてあらゆる選択肢を排除することなく、政府全体でしっかりと検討していきたい」と述べました。

自民 茂木幹事長 “値段設定の再考も必要”

自民党の茂木幹事長は記者会見で「現状でも極めて高い値段になっていて、間違いなく、あらゆる対応策を検討することが必要だ。自民党から、石油元売り会社への補助金の幅をさらに拡大する提案をしているが、さらに価格が上昇した時にどうするかも考えなければならない」と述べました。

そのうえで、いわゆるトリガー条項については「現在は凍結しているが、ガソリン価格が3か月連続で1リットル当たり160円を超えた場合に発動し、130円を下回ると停止するとなっている。今の原油価格から見て、この値段設定は考えていかなければならない」と述べました。

国民 玉木代表 “野党の批判は「従来型の古い考え」”

国民民主党の玉木代表は、記者団に対し「ガソリン価格の高騰で多くの人が困っている中、国民生活を救うために、ある意味、予算案への賛成を条件に、岸田総理大臣からトリガー条項の凍結解除に向けた道筋を引き出したということだ。政策本位で、与野党を超えて協力していく党の方針をこれからも貫きたい」と述べました。

そのうえで、野党各党から「野党として、政府の本予算案に賛成するのはおかしい」などと批判が出ていることについて「従来型の古い考えだ。コロナ禍で大変多くの方が困ってる中、新しい与野党の関係を作り上げていかなければいけない。そのときの判断基準は、国民の役に立つかどうかだ」と述べました。