22年度政府予算案は22日に衆院で可決成立、参院での審議を経て年度内に成立する。衆院の採決では国民民主党が賛成票を投じ、与野党間に小さな波紋が広がった。野党が政府の予算案に賛成することの是非をめぐって見方が分かれている。そんなことよりこの小さな行動によって、マンネリ化している国会の在り方に一石を投ずるのでは、個人的には小さな波紋が大きなうねりとなることを期待している。だがそんな期待感も虚しく現実は、夏の参院選を控えた党利党略の一環という、いつもの通り一片の解釈で葬り去られるのだろう。朝日新聞は「野党の一線越えた国民民主」と批判する。逆に言えば与党が反対することも許さないということか。米国では民主党の1議員がバイデン政権の重要法案に真っ向から反対している。変わりそうで変わらない日本の政治状況、政治家もメディアも古い価値観に固執している。

国民民主の玉木雄一郎代表は立憲民主党との合流を拒否し、国民民主党を立ち上げた当初から「対決より対案」を提唱している。今回は「対決より解決」と主張、ガソリン価格の高騰対策である「トリガー条項」の発動を岸田首相に提案、首相の「検討する」との言質と引き替えに予算案に賛成するという行動に打って出た。ガソリンには消費税に加えてガソリン税がかけられている。ガソリン税の約半分、1リットル当たりおよそ25円は本来の税額より上乗せされて課税されている。この上乗せ分は価格が高騰すれば解除される仕組みになっており、これが「トリガー条項」だ。この条項は東日本大震災の復興財源を確保するための特例法によって2011年から発動が凍結されていている。「政府は凍結を解除するには法改正が必要だと説明しています」(NHK)とのことだが、この解除に向けて政府に協力するというのが玉木氏の主張だ。

トリガー条項の発動は利用者を特定した減税措置と言っていいだろう。ドライバーが40リットル給油すればガソリン代はその都度1000円安くなる。諸物価高騰の折、車が移動手段としてなくてはならない地方の利用者には、かなりの恩恵をもたらすだろう。国会の議論が有権者の生活に直結するというメリットもある。だから参院選を意識した党利党略説を他の野党は声高に叫ぶ。そういう面もあるだろう。だとしても生活者を守るのが政治家の一つの責務なわけだから、堂々とやったらいい。自民党には来たるべき参院選に備え、これを野党分断の道具に使おうという思惑もある。どっちに転んでも党利党略の匂いは拭えない。それを承知の上で、弱小とはいえ野党が政府の予算案に賛成する。政治的なカケかもしれない。あとは有権者の判断に委ねられる。それは政治の王道でもある。