【ロンドン時事】ウクライナを各方面から攻め続けるロシア軍の一部は、南部の南ウクライナ原発の制圧を狙い進軍しているもようだ。4日に南東部のザポロジエ原発を掌握した際、砲撃で火災が発生。原発が再び攻撃を受ければ、放射能漏れなど深刻な被害が生じる恐れもあり、懸念が深まっている。

原発事故被ばく、おびえる周辺国 ヨウ素剤の需要急増―ウクライナ侵攻

 ロシア軍は2月24日に北部のチェルノブイリ原発を制圧。今月4日には欧州最大級のザポロジエ原発を攻撃し占拠した。ザポロジエ原発では、ロシア軍の砲撃により研修施設で火災が起きた。火は間もなく消し止められたが、ウクライナのクレバ外相は、爆発すれば「(1986年の)チェルノブイリ原発事故の10倍の被害」が出る可能性があると指摘。また9日には、ロシア軍占領下のチェルノブイリ原発で停電トラブルがあり、原発の安全性に警戒が強まる。

 「第3の標的」とされる南ウクライナ原発は、ザポロジエ原発の西に位置。国内5カ所(稼働中はチェルノブイリを除く4カ所)の原発のうち2番目の規模とされる。クリミア半島などから北へ進軍するロシア軍は現在、南ウクライナ原発の手前約120キロの都市ミコライフでウクライナ軍と攻防戦を展開。7日時点で原発から30~35キロ地点まで部隊の一部を進めたとの情報もある。

 エネルギー問題に詳しい独立コモディティー情報サービス(ICIS)のオーラ・サバダス博士は8日、ロンドンでの記者会見で「ロシア軍が原発など重要施設を狙っているのは明らか。(攻撃も辞さないことを示して)国際社会やウクライナ政府を脅そうとしている」と指摘。「原発を攻撃すれば何が起きるか分からない。放射能汚染は欧州全体に影響を及ぼす。(事態は)とても恐ろしいメッセージを発している」と警告した。