米国の3月消費者物価指数(CPI、季節調整済み)がきのう発表された。ロイターによると伸び率は前年同月比8.5%、前月(7.9%)から加速した。この伸び率は1981年12月以来の高さだという。前年同月比の伸びが6%を超えるのは6カ月連続。伸び率は前月比でも1.2%上昇した。2月の0.8%上昇を上回っており、上昇の勢いが加速している。ガソリン価格が18.3%上昇したことが大きな要因で、全体の伸びの半分以上を占めた。ちなみにロシア連邦統計局が8日に発表した3月の消費者物価指数(CPI)は、前年同月比で16.6%、前月比で7.6%上昇している。ウクライナ侵攻による西側諸国の制裁を受け、通貨ルーブルが下落。輸入物価が押し上げられインフレが急加速した。これに比べれば米国はまだ落ち着いているといえる。いずれにしてもインフレ懸念は徐々に深刻化している。

米国の内訳を見ると食品が1.0%上昇。そのうち家庭で消費される食品は1.5%上昇となっている。住居費は0.5%、家賃が0.4%上昇した。ホテルなどの宿泊費の伸びも堅調だった。航空運賃は10.7%上昇。家具、自動車保険、衣料品、娯楽、日用品も上昇。医療費は0.5%上昇した。そんな中で処方薬は0.2%下落している。こうした中でインフレがピークアウトするのではとの期待感をもたらしているのが、前月比で伸び率がマイナスとなったコア物価指数だ。コア指数は変動の大きい食料品とエネルギーを除いた物価指数だが、3月は前月比0.3%上昇と、2月の0.5%上昇から伸び率が若干鈍化した。ロイターによると「中古車・トラックの価格が2カ月連続で下落したことを受けた。新車価格の上昇も緩やかだった」ことが要因だという。インフレ懸念が強まる中で唯一の明るい材料といったところか。

戦争は絶対嫌だがインフレもダメ。賃金が伸びない以上、インフレよりはデフレの方がまだマシか、これが普通の庶民感覚だろう。日銀が目標として掲げている物価目標は前年比で2%の上昇。この水準が金融政策や経済政策によって維持コントロールできるならともかく、物価はいったん上がり始めると歯止めがかからなくなる。1970年代後半に米国を襲ったスタグフレーションがいい例だ。この時、ボルカー FRB議長は一時的に政策金利が20%以上に上昇することを容認した。これは一種のショック療法だったが、それでも物価の沈静化には時間がかかった。今回の物価急騰の背景はコロナとロシアによるウクライナ侵略が大きく絡んでいる。3月のロシアと米国の物価急騰は、ウクライナ戦争の早期終息を求める市場の叫びだろう。狂気の戦争の裏で市場が正常に反応している証拠でもある。