バイデン大統領がきのう、韓国から日本にやってきた。大統領としては初めての訪日だ。プーチンのウクライナ侵略、北朝鮮の相次ぐミサイル実験、核実験に対する警戒感も強まっている。中国も尖閣諸島をはじめ近海で領土拡大の示威活動を強めている。世界中が波乱含みの様相だ。韓国に次いで豪州でも9年ぶりに新政権が発足する。保守党に代わって労働党が政権を担う。21日の総選挙で勝利したアルバニージー党首は23日に首相に就任。24日に行われるクワッド首脳会議に出席する。ロイターによると、「開票作業はまだ終了しておらず、新政権の構成も固まっていないが、24日に東京で開かれる日米豪印4カ国の協力枠組み『アッド』首脳会合に出席するため、英女王の王権を代行する総督の任命を受けて首相に就任した」という。豪州政界も慌ただしい。

豪州のテレビ局によると「約12議席が僅差で勝者が決まっていない状況で、労働党は下院(定数151)の過半数(76議席)をなお4議席下回っている」(ロイター)という。この記事が配信されたのはきょうの午前9時44分。この時点で労働党の勝利はまだ確定していない。未確定段階でクワッド出席を決意する。それだけこの首脳会議を重視している表れということだろう。アルバニージー党首ならびに労働党は従来から親中国とみられている。それを意識してか選挙公約に「外交政策は前政権を踏襲する」と公約していたようだ。クワッドは中国を意識した包囲網の一翼を担っている。窮屈な日程の中でクワッド出席にこだわった新首相の真意はよくわからない。ひょっとすると価値観を共有する西側の一員であることを強調したかったのかもしれない。いずれにしても激動する世界を象徴しているような決断だ。

バイデン大統領は今回の韓国と日本の訪問で、アジア重視の姿勢をアピールしたかったのだろう。世界的な危機を作り出したのはロシアだが、歩調を合わせる中国、北朝鮮を加えれば、強権国家を代表する3カ国がはいずれもアジアに属している。ウクライナはNATOだけではない。全ての価値観を共有する西側陣営を代表して強権国家・ロシアと戦っている。バイデン大統領のアジア重視は、ウクライナに対する側面支援でもある。北朝鮮はこの期間に核実験をするのではないかとの観測が強かった。だがバイデン氏は韓国で、「(核実験の)いかなる懸念もない」と発言した。一部メディアは中国が北朝の核実験に批判的な姿勢を強めていると報道している。金正恩は中国に逆らえないのかもしれない。バシデン大統領の日韓訪問、クワッド首脳会議開催、豪州新首相の強引とも言える日本訪問。すべてがウクライナにつながっている。