プーチンにピッタリと寄り添う中国の習近平主席。ゼロコロナ政策を鬼のように推進している現状は、遠い海外から見ていても痛ましい限りだ。ロックアイトで外出禁止を強いられている中国人民のやり場のない怒り、習主席に対する鬱積した憤り、遠くから眺めているだけだが中国人民の心情は痛いほどよくわかる。中国駐在の諸外国の人たちもまた、不安と苛立ちに腑が煮えくり変えてっていることだろう。民衆の側から見ればこれがゼロコロナ政策の実態だ。飛ぶ鳥を落とす勢いだった中国経済はみるも無残な状況になっている。統計上確認されているわけではないが、そうなっているはずだ。YouTubeを見ていたら中国通で知られる講談社顧問の近藤大介氏が次のように指摘していた。「若年層、16歳から24歳の4月の失業率が18.2%に達した」。ゼロコロナはまだまだ続く。G D Pの急落は間違いないだろう。

だが、統計上はそうならないらしい。秋には中国共産党大会が控えている。習主主席が3選を目指す会議だ。コロナの封じ込めに失敗し、中国経済が失速したとしても、そんな現実を習主席が許すはずがない。統計を改ざん、偽造、捏造し、ある程度の成長率を弾き出す。国家主席が望まない統計を国家統計局が出すはずがない。日本ならそれだけで大臣の首が飛ぶ。だが中国は違う。核心である習主席の意向を忖度することが官僚や政治家、有識者の“常識”だ。プーチンを取り巻く茶坊主たちと同じ構造が中国共産党内部で出来上がっている。近藤氏によるといま中国で、一つのブラックジョークがはやっているそうだ。「財務部長(大臣)が匙を投げても、人民銀行(中央銀行)が諦めても、国家統計局がついている」。このジョークに瞬間的に反応できる人はかなりの中国通だ。

プーチンのウクライナ侵略、北朝鮮の相次ぐミサイル実験、中国では国家主席が主導してゼロコロナと新疆ウイグル自治区での人権弾圧が続いている。「ゼロコロナ」も「ウクライナはナチだ」も発想は同じ。独裁者達はそれが正しいと完全に信じ込んでいる。チェック機能もなければ、間違いを指摘する取り巻きもいない。習近平はコロナ患者が一人でもいればゼロコロナを続けるだろう。コロナもウイグル人も殲滅の対象でしかない。かくして中国経済は公式的にはある程度の成長を続ける。そして世界中に経済危機が蔓延する。ロシアにも中国にも、北朝鮮にだって批判者はいるはずだ。だがそれを口にした途端、自分の命が危なくなる。かくして独裁国家は永遠に存続する。ウクライナのゼレンスキー大統領は強調する。「ここでウクライナが負ければ、世界中で同じことが起こる」。その通りだと思う。